休日はこんなに早く過ぎてしまったのでしょうか？たぶん、私の脳はそれがこんなに良いものだとは予想していなかったからでしょう…

クラスメイトのみなさん、冬休みももうすぐ終わりです。もちろん、皆さんの多くはすでに学校に通い始めています。楽しい時間を過ごしていると、時間があっという間に過ぎていくように感じますか？実は、これは脳の予測エラーなのかもしれません。予想以上にポジティブな刺激を受けると、時間が早く過ぎるように感じるでしょう。

私たちの時間感覚は、あらゆる経験や行動の基礎となるものですが、この感覚はスポンジのように伸びたり縮んだりする不安定な主観的な感覚でもあります。気分、音楽、周囲で起こっていること、注意力の変化などによって、時間の認識が変わり、時間が早くなったり遅くなったりしているように感じることがあります。たとえば、私たちは怒った顔を見ると無表情な顔に比べて時間が遅く流れるように感じます。この認識の違いは、蝶と蜘蛛、青と赤の画像を比較する場合にも存在します。人生でも同じような経験があります。例えば、不安が増すほど鍋の中の水が沸騰するのが遅くなり、幸せな時間はあっという間に過ぎ去ってしまう、などです。

「何が私たちの時間の認識を延長したり圧縮したりしているのか」という疑問に対して、イスラエルのワイツマン科学研究所の研究者イド・トーレン、クリストファー・アバーグ、ロニー・パズらは、昨年8月にネイチャー・ニューロサイエンス誌に発表した研究で新たな知見を提示した。私たちは報酬と罰を通して学習し、その背後にあるメカニズムは時間の認識に関係している、と長い間考えられてきました。現在、3人の研究者はこの見解を裏付ける証拠を発見した。この研究では、脳が将来何が起こるかを常に予測し予期しており、この行動が私たちの時間の認識を決定していることも判明した。

「『幸せな時間は長く続かない』ということわざは誰もが知っているが、この言葉の完全な意味はおそらくもっと微妙なところがある。つまり、予想以上に幸せなら、それは長く続かないということだ」とハーバード大学の認知神経科学者サム・ガーシュマン氏は言う。

時間と学習

脳にとって、「時間」は物を表すものではありません。異なる脳領域は異なる神経メカニズムに依存して時間を追跡し、時間の感覚を制御する神経メカニズムはさまざまな状況で変化します。

過去数十年にわたる研究により、ドーパミンが私たちの時間の認識に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。ドーパミンは私たちの時間の認識にさまざまな影響を与えますが、それらは互いに矛盾して混乱を引き起こすこともあります。いくつかの研究では、ドーパミンの増加により動物の体内時計が早まり、動物が時間の経過の速度を過大評価するようになることが判明しています。他の研究では、ドーパミンが脳に出来事の進行を圧縮させ、時間が早く過ぎるように感じさせることが判明しています。他の研究では、出来事の状況に応じて両方の効果が存在することがわかっています。

ドーパミンと時間知覚の関係は、ドーパミンが報酬学習と強化学習に機能するため、研究者にとって非常に興味深いものです。たとえば、予期せぬ報酬を受け取ったとき（つまり、予測を誤ったとき）、ドーパミンという化学物質が急増し、この報酬信号によって以前の行動を継続するようになります。

ドーパミンが時間の知覚と学習プロセスに同様に重要であることは偶然ではありません。メタンフェタミンなどの薬物やパーキンソン病などの神経疾患は、これら両方のプロセスを変化させ、ドーパミンの分泌も変化させます。

学習自体は、行動と結果を関連付けるプロセスであり、1 つのイベントを別のイベントにタイムリーに接続する必要があります。 「実際、強化学習メカニズムの中核は時間情報です」と神経科学者のジョセフ・パトン氏は語った。

しかし、科学者たちは、学習と時間の知覚が脳内でどのように統合されるのか、また、このプロセスにどの領域が関与しているのかをまだ解明していません。実際、「伝統的に、これら 2 つの領域は完全に別々に研究されてきました」とワシントン D.C. のジョージ・メイソン大学の心理学者マーティン・ウィーナー氏は言います。「『学習と時間知覚の両方が同じ神経伝達物質システムを使用するのなら、それらはどのように相互に影響し合うのか』と問う人は誰もいません。」

予測誤差の影響

Nature Neuroscience の論文では、この疑問をさらに詳しく探究しています。この研究では、被験者は画面上で2つの数字が次々に点滅するのを見た。通常は、ゼロの後に別のゼロが続く。しかし、時折、2 番目の数字として正または負の整数がランダムに画面に表示されることがあります。正の場合、参加者はボーナスを受け取りますが、負の場合、ボーナスは差し引かれます。実験では、2 番目の数字が表示される時間の長さが異なり、被験者はどちらの数字がより長く表示されたかを報告しなければなりませんでした。

結果は、何か良いことや予期せぬことが起こったとき（研究者はこれを「正の予測誤差」と呼んでいる）、被験者にとって刺激がより長く続くように見えることを示した。不快な結果（否定的な予測エラー）は、脳にこれらの経験をより一時的なものとして認識させます。 「これは基本的に、私たちの時間に対する認識が、結果に対する驚きの度合いによって体系的に偏っていることを示している」とヴィラノバ大学の心理学者マシュー・マテル氏は述べた。

研究チームは、予測誤差が大きいほど、時間の認識の歪みが大きくなることを示しました。彼らは、各被験者の課題におけるパフォーマンスを予測できる強化学習モデルを構築しました。研究者らはまた、運動学習などの機能に関与する脳領域である被殻への影響を追跡するために被験者の脳ス​​キャンも実施した。正確なメカニズム（およびドーパミンの役割）を判断するにはさらなる実験が必要ですが、この研究は学習と時間知覚の両方のモデルに影響を与えます。

神経疲労の影響

外部からの刺激に応じて時間の認識が長くなったり短くなったりすると、特定の行動や結果にどれだけ近いかという感覚も変化し、その結果、これらの物事のつながりを学ぶ速度にも影響が出る可能性があります。元カリフォルニア工科大学のポスドク研究員であるボーエン・ファン氏は、予測誤差に関連する時間効果は「強化学習モデルが何が起きているかを正確に反映するには、この追加機能が必要である」ことも示唆していると述べています。

「この時間的効果と強化学習の相互作用を考慮することは、将来のモデル作成者や脳の理解を深めようとしている人々にとっての課題だ」とマテル氏は語った。ガーシュマン氏と博士課程の学生ジョン・ミカエル氏はこの課題に取り組み、脳内の時間の流れを適応的に調整することで精神的な予測を改善する学習モデルの開発に取り組んでいる。

しかし、予測誤差だけが私たちの時間感覚を形作る要因ではありません。昨年9月に『Journal of Neuroscience』に掲載された研究によると、短い刺激に繰り返しさらされた参加者は、わずかに長い間隔の持続時間を過大評価する傾向があることがわかった。研究によれば、この状況では短期的な刺激に敏感なニューロンが疲労し、より長時間の刺激に敏感なニューロンがその後の刺激の認識方法を支配するようになるためである可能性があるという。同様に、長い間隔の刺激に繰り返しさらされた後、参加者はわずかに短い間隔の持続時間を過小評価しました。

脳の縁上回（SMG）と呼ばれる領域のニューロンが疲労するほど、時間的な歪みが大きくなります。画像提供: 林とイヴリー

「刺激が提示される文脈を変えることで、被験者がこれらの持続時間をどのように知覚するかを実際に操作できるのです」と、日本の国立情報通信研究機構の認知神経科学者、林正道氏は言う。脳活動をスキャンした結果、右頭頂葉の領域がこの主観的な時間体験を司っていることが示唆された。林氏はカリフォルニア大学バークレー校のリチャード・イブリー氏と共同でこの研究を行った。

林氏とイブリー氏は、ワイツマン氏の3人の科学者とともに、まったく異なる脳の領域とメカニズムに焦点を当てたが、どちらの研究でも脳の時間認識に対する双方向の影響が観察された。一方で、これは脳内のタイミング処理がいかに多様であるかを示しています。一方、林氏は、右頭頂葉は確かに被殻と機能的、解剖学的に繋がっており、おそらく両者の相互作用が統合的な時間認識を形成しているのかもしれないと述べた。

このような（または他の）相互作用を可能にする規則性や計算は、私たちの時間認識の根底にある可能性があります。しかし、これらのルールと計算が決定されるまで、科学者は事前に時計を見て時間を判断することしかできません。

出典: グローバルサイエンス

ジョーダナ・セペレヴィッツ著

翻訳：ファン・イーフェイ

オリジナルリンク:

https://www.quantamagazine.org/reasons-revealed-for-the-brains-elastic-sense-of-time-20200924/

この記事に掲載されている「Science Popularization China」の透かしの入った写真はすべて著作権ギャラリーからのものです。写真の転載は禁止です。