地球規模の気候変動が脳を「制御不能」にさせているのでしょうか?

リヴァイアサンプレス:

「ダニの奇妙な咬傷」と題された以前の記事で、著者らは、地球の気候が変化するにつれて、ダニが地理的範囲を拡大し、新しい宿主に侵入する機会を持つようになり、ダニがもたらすリスクが増大していると指摘した。北米では、ローンスターダニとクロアシダニが協力して北のカナダへ移動しています。

以前、恐ろしい映像レポートを見たことがあります。暖冬により越冬中のダニの数が急増し、トナカイは密集したダニに覆われ、ついには血を吸われて死んでしまったのです。

これは気候変動によってもたらされたごく小さな生態学的変化にすぎません。おそらく今日の記事の著者が述べたように、ますます極端な気候が出現し続けるにつれて、私たちの脳は気候変動に対して最も脆弱な領域の一つになりつつあるのかもしれません。そしてこれは決して誇張ではありません。

1884 年 2 月、英国の美術評論家で博学者のジョン・ラスキンがロンドン研究所の舞台に立ち、天気をテーマに 2 回の講演を行いました。 「19世紀の嵐雲」は、特定の「暗黒の風」と「疫病の雲」に対する彼の怒りの攻撃である。

ヴァル・ダオスタの7月の雷雲、ジョン・ラスキン、1858年 © Wikipedia

彼の見解では、この現象は近年になってビクトリア州の都市に広がり始めたばかりだ。彼は懐疑的な聴衆に対し、注意深く気象測定を行ってきたと語った。彼はこの新たな天候の「辛辣さと悪意」を非難し、そしておそらくもっと重要なことに、それが社会におけるある種の「道徳的混乱」を反映している点を非難した。

彼は、天気を観察することによって、人々は自分自身の人間の状態を理解できると示唆した。

その2月には、おそらく今日と同じように、いわゆる「闇の風」を狂人の戯言として片付けるのは簡単だっただろう。雲は単なる雲です。ラスキンが描写した雲が実際に存在したとしても（当時は議論がありましたが）、それが人間の精神と何らかの関係があるとは想像しにくいのです。ブライアン・ディロンが2019年のパリ・レビュー誌のエッセイで指摘したように、ラスキンの「悪天候」と彼自身の壊れて悲しい心の状態との境界を見分けるのは難しいかもしれない。

1886年、ラスキンはオックスフォードで講義中に精神崩壊を起こした。世紀の変わり目に彼が生涯を終える頃には、彼は狂人であると広く考えられていた。気象学と人間の精神に関する彼の発言は、JMWターナーに関する著作ほどの注目を集めていない。

コンスタンタン・ムニエ『鉱山地区』（1852-1905）。 © ウィキペディア

しかし、ラスキンにとって、これらの雲は単なる雲以上のものでした。彼が日記に記しているように、これらの雲は「製造業の濃い霧」によって生み出されたものでした。 「疫病の雲」は産業革命によってもたらされた瘴気を象徴しています。道徳的な混乱は、当時起こっていた急速な社会的、環境的変化によって引き起こされた。ラスキンは、田園風景が容赦なく工業の中心地へと変貌した時代に生きていました。空気は硫黄と苦痛の匂いがした。煤煙が充満した空気、化学物質や人間の排泄物、機械の騒音は、単に物理的な妨害物であるだけではありません。これらは感覚に対する攻撃であり、まだ完全には理解されていない方法で私たちの気分や行動を形作ります。

ラスキンは、道具、巨大な工場、環境破壊を伴う容赦ない工業化のペースが人々の精神的健康を損なっていると信じていました。心も身体と同様に、繁栄するためには健全な社会的、物理的環境が必要です。これは実はかなり新しい考え方です（アメリカ精神医学会の創設者であるアイザック・レイは、精神的健康の前身である「精神衛生」の概念を 1893 年まで定義していませんでした）。ラスキンにとって、環境の不安定さは心の不安定さにつながります。両者は互いに補完し合います。

---

1世紀以上が経ち、私たちが新たな一連の劇的な環境変化に取り組む中、「疫病の雲」が再び私たちの上に迫っています。地球の平均表面温度は産業革命以前から約 1.1°C (2°F) 上昇しており、温暖化のほとんどは過去 40 年間に発生しています。氷河は溶け、海面は着実に上昇し、嵐は猛威を振るっています。

© ビハンス

しかし、最も一般的な物語は、外界、つまり私たちの体の外の世界についての物語です。気候変動に関する物語は、異常気象、経済の混乱、生物多様性の喪失に関するものです。しかし、おそらく私たちは狂っているかもしれないラスキンの言葉を真剣に受け止める必要がある。私たちの心の中の雲はどうだろうか？気候危機が異常気象を引き起こし、海洋を酸性化し、気温記録を恐ろしいほどの頻度で破る中、次のような問いかけをする価値がある。私たちの心や精神も変化しているのだろうか？

ここに、心配になるほど肯定的な回答をいくつか示します。

移民裁判官は暑い日には亡命希望者に有利な判決を下すことに消極的になる。暖かい日には穏やかな日に比べて生徒の学習成果が4分の1低下し、気温が高い学年では学習成果の低下と関連することが多かった。気温もオンライン上のヘイトスピーチの発生率に影響を与える可能性があります。気温が上がると、家庭内暴力事件が急増します。

しかし、あなたはすでにそう感じているかもしれません。

© ジフィー

暑い天候では、イライラしやすくなるかもしれません。少し頭の回転が鈍く、集中力が低下し、衝動的に行動する可能性が高くなります。認知神経科学と行動経済学における数多くの研究が、あなたの行動を裏付ける証拠を提供しています。気温が暖かくなると、運転手はクラクションをより頻繁に（そしてより長く）鳴らします。暑い天候はスポーツイベントでの罰則の厳しさを予感させるものでもある。野球では、暑い日に投手が打者を打つ可能性が高くなり、屋外の気温は、対戦相手の投手が同じことをしているのを見た場合に、投手が同じように報復する傾向をよりよく予測する指標となる。

つまり、「疫病の雲」は私たちの中にも存在しているようです。

これは、私たちの内なる世界と外なる世界が相互に関連していることを示しており、人間の自律性がもろいことを明らかにしています。私たちの決断の多くは、直感的に考える以上に環境の影響を受けやすいのです。これにより、気候危機に対する見方もまったく変わります。つまり、気候が変化すると、私たちも変化します。

---

ラスキンが講義を行ったロンドン研究所は 1912 年に閉鎖されました。今日では、環境が精神に及ぼす悪影響について激しく非難したいときは、『ランセット』誌に論文を発表します。 2024年5月、英国の臨床神経科医24人が「多くの神経疾患の発生率、有病率、重症度」が地球温暖化の影響を受ける可能性があると主張した。

英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの神経学教授サンジェイ・シソディヤ氏が率いる研究者にとって、地球規模の気候現象はまさに私たちの内なる雲の物語なのです。

© アドビストック

シソディア氏とその同僚は、332件の科学的研究を調査し、気候が人々に予想以上に深く影響を及ぼし、大脳皮質の亀裂の奥深くまで及んでいることを明らかにした。偏頭痛、脳卒中、てんかん発作、多発性硬化症はすべて気温と関連があるようです。

病院の外では、気候変動によりダニ、蚊、コウモリなどの感染症媒介動物の生息範囲が拡大しており、科学者は黄熱病、ジカウイルス、脳マラリアなどの媒介動物媒介性および人獣共通感染性の脳疾患が増加すると予測している。環境の変化が感覚システムや知覚に影響を及ぼし、感覚による情報処理の有効性を低下させる可能性があることは明らかです。淡水温の上昇はシアノバクテリアの大発生につながり、神経毒を放出して筋萎縮性側索硬化症（ALS）などの神経変性疾患のリスクを高める可能性がある。

© ジャパンタイムズ

実際、最近の研究では、気候変動がパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患によるすでに深刻な負担を悪化させている可能性があることが示唆されています。平均気温より高い国では、温暖化の進行がパーキンソン病の症例増加と関連しており、Sisodia らによると、なお、認知症率が最も急速に増加すると予想される国々は、気候変動の影響を最も受けている国々となるでしょう。

同様に、アルツハイマー病患者の短期的な高温への曝露は、救急外来受診の増加につながるようです。私たちが吸う空気も補助的な役割を果たしている可能性がある。例えば、人々が幼い頃から高濃度の微粒子物質とオゾンにさらされているメキシコシティでは、解剖の結果、30歳未満の人々の99％がアルツハイマー病を患っていたことが判明した。

また、リスクは生きている人間に限ったものではありません。

2022年の疫学研究によると、妊娠初期に高温にさらされると、子供の統合失調症、食欲不振、その他の神経精神疾患のリスクが大幅に高まることが示されました。妊娠中の高温がラットの神経発達を遅らせる可能性があることは以前から知られていました。他の科学的研究では、胎児期に自然災害に遭遇すると、その後の人生で不安、うつ病、注意欠陥・多動性障害、行動障害のリスクが大幅に高まることが示されています。

これらの影響により、人新世における世代間の責任が新たな批判的な精査を受けることになります。研究のほとんどは進行中であり、将来どのような影響が現れるかわからないのです。現在わかっていることは、次々と行われる研究で、脳が気候変動に対して最も脆弱な領域の一つとして浮上しているということだ。

クラクションを鳴らすことと野球のピッチャーの質問に戻ります。

脳に焦点を当てることで、これらのケーススタディに対する潜在的なメカニズムの説明が得られ、「闇の風」のような表現の使用を避けることができるかもしれません。たとえば、高温は、機能的な脳ネットワーク（領域間の行動を調整するもの）をランダムな活動へとシフトさせるようです。科学者たちは、極度に暑い天候では、背外側前頭前野（dlPFC）の過負荷に気づいた。米国スタンフォード大学の神経内分泌学者ロバート・M・サポルスキー氏はこの領域を「前頭皮質における究極の合理的意思決定者」と呼んでいる。

背外側前頭前皮質は、人が衝動的な決断を下す範囲を制限します。背外側前頭前皮質の活動が乱れると、大脳辺縁系（感情の調節を司る扁桃体など）の行動に対する相対的な影響が増大することが多い。気温が高くなるほど、意思決定は合理的ではなくなります。

環境が脳に及ぼす物理的な影響は、背外側前頭前皮質に限定されません。たとえば、ゼブラフィッシュの熱ストレスは、シナプスの構築と神経伝達物質の放出に関与するタンパク質の発現をダウンレギュレーションします。マウスの場合、熱は記憶の形成と保存に不可欠な脳領域である海馬の炎症を引き起こします。神経炎症は多くの場合、初期の保護的役割を果たしますが、ミクログリアやアストロサイトなどの免疫細胞の慢性的な活性化は、炎症誘発性分子が長期的に脳細胞に損傷を与える可能性があるため、有害となる可能性があります。人間の場合、過熱はその部位への血流の減少と関連しています。暑い気候では認知能力が低下し、攻撃性が増すという心理学者の観察は、これらの研究結果の文脈では完全に理にかなっています。

環境神経科学という新興分​​野では、「外部環境、神経生物学、心理学、行動の間の質的および量的関係を理解する」ことが試みられています。より具体的な新語として、この特定のフレーズには騒音、都市開発、照明、犯罪などの環境への曝露も含まれるため、この新しい包括的な分野を気候神経疫学と呼ぶことができます。あるいは、分かりませんが、TikTok にもっとふさわしい名前が必要かもしれません。神経気候学？生態学的神経力学？

© PBS

私はそれを「自然の重み」と呼ぶことを好みます。

この負担は、上で述べた行動への影響と同様に、私たちに行動を起こさせるのです。極度の暑さが心の奥底まで浸透し、暴力に傾くようになると、選択肢が実際に制限されてしまいます。衝動的な意思決定は、本質的に、慎重な意思決定よりも考慮が少ないことを意味します。気候変動が私たちの反応や決断に影響を与えるのであれば、私たちはそれを自由意志の感覚を損なうものとして理解すべきです。

自然の負担は重い。私たちは少し圧倒されてしまいました。

これは大きな心理的負担でもあります。 「気候不安」という概念はご存知かもしれません。このフレーズは通常、差し迫った環境破壊に対する病的なほどの心配や恐怖を指しますが、私にとって特に当てはまる言葉だとは感じたことはありませんでした。不安は、精神障害の診断と統計のマニュアル（DSM）の定義によると、「過度の」心配として説明されることが多いです。

気候変動の明らかな兆候を見て、破滅が迫っているという予感を感じることは、決して「過剰」なことではないと思います。

© コーポレートナイツ

気候不安を抱える人々は、他の人々よりも脳が発達していると考えるべきなのかもしれない。カサンドラ（ギリシャ・ローマ神話に登場するトロイの王女でアポロンの巫女。聖なる蛇が舌で耳を洗ってくれたため、あるいはアポロが予言の能力を与えたため、予言する能力があったが、アポロに抵抗したため、彼女の予言は信じられなかった。編集者注）は、唯一冷静な人間なのかもしれない。

---

冗談じゃないよ。神経科学は問題の脳の研究を始めており、それは無駄ではなかった。

例えば、2024年の研究では、ノーザンミシガン大学（NMU）の研究者らは、気候変動に対する不安レベルが高いと報告した人々は、気候不安レベルが低い人々と比較して、特に脅威の検知を担う脳の中心核である中帯状皮質において、脳の構造と機能に異なるパターンを示していることを発見した。

具体的には、気候不安のある脳は中帯状皮質（灰白質）が小さいようですが、脳のサリエンシーネットワーク（感情に関連する情報を常に環境からスキャンしていると考えられているシステム）内の他の重要なハブと機能的につながっているようです。顕著性ネットワークでは、中帯状皮質が扁桃体や島皮質などの大脳辺縁系と密接に連携して、この情報に対する適切な反応を準備します。気候不安を抱える人々では、このネットワークは気候関連の脅威の信号に対して特に敏感である可能性があります。

したがって、中帯状皮質が小さいことは、欠陥というよりも、より効率的で洗練された脅威検知システムを反映している可能性がある。

時間の経過とともに、脳は冗長な接続を切り捨て、最も有用な神経経路のみを保持することはよく知られています。ミシガン大学の研究者らは、選択的刈り込みによって気候不安を抱える脳が心配な情報をより効率的に処理できるようになり、中帯状皮質と脅威の予測や対応に関わる他の領域との間の迅速なコミュニケーションが促進される可能性があると示唆している。言い換えれば、気候不安を抱える人々の中帯状皮質は「より効率的な神経接続」を示す可能性があると研究者らは書いている。

潜在的な危険に対するこの神経学的感受性には、利点と欠点の両方があります。一方で、一部の人々は、これから起こる本当の危険に気づくかもしれない。中帯状皮質は将来の脅威を予測するのに非常に重要であり、メタ分析により、人々が予測できない否定的な結果について考えるときにこの領域が一貫して活性化されることが判明しました。気候災害の脅威が迫っていることを考えると、一触即発の脅威検知システムは適応力のある資産となる可能性がある。

一方、研究者たちは次のように考えている。

気候危機の複雑さ、不確実性、時間的・地理的な距離、そしてその地球規模の性質により、個人は気候変動に伴うリスクを過小評価したり、圧倒されて現実から切り離されたりする可能性があります。この状態は「生態学的麻痺」と呼ばれることもあります。

中帯状皮質の過活動は臨床的不安障害と関連付けられており、新たな研究結果は気候不安が同様の神経基盤の一部と関連していることを示唆している（ただし、ミシガンの研究で観察された脳の違いは全体的な不安レベルによって説明できなかったため、気候不安は全般性不安とは異なると思われることを覚えておくことが重要である）。

これらの調査結果は推測に過ぎないが、気候不安は単なる社会文化的現象ではなく、理論的に特定可能な神経的相関関係があることを示唆している。これらの研究は、なぜ一部の人々が他の人々よりも気候変動の心理的影響に対して脆弱であるのかを理解するための潜在的な生物学的枠組みを提供している。彼らはまた、興味深い疑問を提起している。気候不安を抱える人々の脳は、地球温暖化という実存的脅威に対処するのに特に適しているのか、それとも簡単に圧倒されてしまうのか。

しかし、いずれにせよ、これらはすべて、外の世界が私たちの心の奥深くまで浸透していることを示しています。

---

おそらく、これには認識する必要がある別の側面があるのでしょう。気候変動は私たちの神経生物学に浸透しつつあります。私たちの神経生物学を気候変動に適応させるとはどういう意味でしょうか?

これは、オーストリアのウィーン大学の神経科学者キンバリー・ドエル氏とその同僚が2023年にネイチャー・クライメート・チェンジ誌に発表した論文の前提だ。彼らは、この分野が気候適応への対応を理解し、環境保護の決定を促進する上で重要な可能性を秘めていると信じています。ラスキンが怒りをもって環境について疑問を投げかけて以来、環境神経科学は生物とその生態学的地位との相互関係を探求し始めました。緑地、都市の無秩序な拡大、社会経済的階層といった現代の環境の質感が脳に影響を及ぼすことが今ではわかっています。気候変動も例外ではありません。

そのため、ドーア氏らは、科学者や活動家が神経科学の発見を取り入れて、気候変動対策の推進を目的としたコミュニケーション戦略を改善できると信じている。彼らは、神経生物学と認知神経科学からの洞察を活用して、私たち自身と社会全体にとってより効果的な気候解決策を設計したいと考えています。

このタイプのアプローチのモデルはすでに存在します。

たとえば、貧困研究では長い間、社会経済的状況と健康状態の悪さが関連付けられてきました。近年、神経科学では、毒素への曝露や慢性的なストレスなど、貧困のさまざまな要因がどのように神経構造を侵食し、認知発達を妨げるのかが研究されています。脳科学だけでは貧困を解決することはできませんが、こうしたメカニズムを少しでも理解することで、選択的注意力や認知テストのスコアを向上させることが実証されている家庭ベースの就学前教育カリキュラムであるヘッドスタートなどのプログラムの研究につながっています。

構造的な不平等をなくすのは容易ではないが、神経科学者は貧困の神経相関を明らかにし、貧困がもたらす可逆的な害を明らかにし、それに応じた正確な救済策を設計することに成功した。ドール氏とその同僚は、同じ可能性が気候変動の神経科学にも当てはまると信じている。

© エドサージ

しかし、この可能性を実現するには、人新世の熱狂的な夢がすでに私たちのウェットウェアをどのように変えつつあるのかをよりよく理解する必要があります。社会科学や行動科学では、地球の変化がもたらす心理的影響について記録し始めているが、気候変動の神経学的分類については、まだ十分に研究されていない。この分野の方法論と概念のレパートリーは課題に対応できる準備ができていますが、それを磨くには、気候科学、医学、心理学、政治科学など、さまざまな分野との連携が必要になります。

中心となる疑問は、変化だけが唯一の不変の生物圏において、神経系は変化に対応できるほどの柔軟性を持っているのか、それとも適応に苦労するのか、ということです。

カヴェリの挑戦に取り組む第一陣の研究者たちは、地球の混乱に直面しても脳が回復する能力を解明できる独自の立場にあるさまざまな生物を研究している。例えば、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のヴォルフガング・シュタイン氏とドイツのグライフスヴァルト大学のシュテフェン・ハルシュ氏は甲殻類に焦点を当て、甲殻類の神経体温調節器が浅瀬と深海の水温上昇にどのように反応するかを理解しようと努めている。別の研究チームは頭足動物の脳をターゲットにした。頭足動物のRNA編集能力は、窒息しつつある水中の生息地で酸素レベルが急激に低下する状況に耐える能力の鍵となる可能性がある。デンマークのコペンハーゲン大学のフローレンス・カーメン氏が率いるカヴェリ研究チームの3番目のチームは、ゼブラフィッシュを極度の温度にさらし、水の世界が熱くなっても繁殖を可能にするニューロンとグリア細胞の分子特性を探している。

---

脊髄の上にあるスポンジ状の司令センターである脳は、常にブラックボックスでした。気候危機が深刻化し、私たちの足元にある生態系の基盤がますます不安定になるにつれ、脳の中を覗く必要性がますます高まっています。シソディア氏とその同僚が描き出している新しい神経地図の輪郭が、すでに見え始めている。

今では、脳は静的で自己調節的な組織というよりは、環境の輪郭によって形作られる、動的な生きた風景であることがわかっています。グリーンランドの氷床が気候変動の熱でうめき、曲がるのと同じように、気温が上昇するにつれて私たちのシナプスも萎縮し、ニューロンも死滅するでしょう。海面上昇によって海岸線が飲み込まれ、森林が干ばつや火災に屈するのと同じように、私たちの脳の解剖学的境界も、環境による新たな攻撃のたびに再描画されつつあります。

しかし、脳と生物圏の間の対話は一方通行ではありません。私たちが行う選択、私たちが行う行動、私たちが危機に対応する方法、これらすべての決定は、良くも悪くも環境に反映されます。したがって、私は次のように提案します。気候変動が私たちの思考の輪郭をどのように形作るかを理解しようとする際には、持続可能な開発のために私たちの知的構造をどのように更新するかについても考慮する必要があります。

人新世の考え方を持つ地図製作者は困難な課題に直面しています。しかし、脳スキャン、振動する電極、遺伝子編集の精度、アルゴリズムの力を備えた神経科学の力があれば、出発点に近づくことができるかもしれない。環境の影響の経路を神経の根源まで追跡することで、心と地球の運命を結びつける複雑な網を解き明かし始めることができるかもしれません。

© ウィキペディア

一つ明らかなことは、気候危機の歯車が回り続けるにつれ、私たちの脳もそれに巻き込まれるだろうということだ。問題は、私たちが受動的な乗客なのか、それとも主導権を握り、住みよい未来への道を切り開くのか、ということです。自然の負担の重さ、つまり私たちが直面している危機の大きさは、気が遠くなるほどで​​す。しかし、それは私たちを麻痺させるものではありません。点から点へ、シナプスからシナプスへ、私たちは集まる疫病の雲の中を進む道筋を描くことができます。

ラスキンはかつて、最も明晰な瞬間のひとつで、「不完全さを排除することは、表現を破壊し、努力を抑制し、エネルギーを麻痺させることだ」と言ったことがあります。たとえこれを何とかできたとしても、環境が心に与える影響のいわゆる不完全さを排除すべきではありません。むしろ、私たちはそこから自分と世界との親密で重要な関係を読み取るべきです。

クレイトン・ペイジ・アルダーン

翻訳者：tamiya2

校正/ウサギの軽い足音

オリジナル記事/aeon.co/essays/how-a-warming-earth-is-changing-our-brains-bodies-and-minds

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、tamiya2によってLeviathanに掲載されています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。