残り時間はわずか90秒です。 「終末時計」とは何を意味するのでしょうか?

© ウォルラス

リヴァイアサンプレス:

実際、世界が数分以内に完全に破壊されると知ったら、あなたの心の中ではおそらくこう思うでしょう。「どうせ破壊されるんだから、横になって死を前にして誰もが平等であることを受け入れたほうがいいだろう。」これは批評家が「終末時計」に疑問を呈する理由でもある。このカウントダウン設定は人々の否定的な感情を増大させ、怠惰にさせるだろう。しかし、私たちはこのリマインダーの肯定的な意味も理解する必要があります。つまり、自分自身の努力によって、実際に時計を 1 分戻すことができる可能性があるということです。

実際、核戦争の脅威と比較すると、私たちが直面している気候変動の影響はすでにより広範囲に及んでいます。記録を破る珍しい高温、アレルギーの増加につながる開花期の延長、産業汚染により空気清浄機やマスクの追加購入を余分に強いられることなどです。今、私たちは自分自身に問いかけるべきなのかもしれません。ますます不安定になるこの世界で、自分に何ができるだろうか？

2020年1月23日、シカゴに本部を置く非営利の研究教育機関である原子科学者会報は、終末時計の針を真夜中100秒前に調整しました。これは、74年の歴史の中で最も真夜中に近づいたことになります（真夜中は世界の終わりを象徴しています。2023年1月、ロシアとウクライナの戦争の脅威の下、終末時計はさらに10秒進められ、真夜中まであと90秒となり、3年前に記録された記録をさらに破りました。これは、終末時計が設立されて以来、最も真夜中に近づいたことになります。編集者注）。

同速報によれば、この変化は気候変動、核拡散、誤情報による世界的な脅威の増大を反映しているという。しかし、終末時計とはいったい何なのでしょうか?それはどこから来たのですか?アップデート方法は？ 20 世紀と 21 世紀における地球規模の災害リスクの変化について、何がわかるでしょうか?

終末時計の起源は、広島と長崎に原爆が投下された1945年にまで遡ります。その年、物理学者のハイマン・ゴールドスミスや生物物理学者のユージン・ラビノウィッチなど、マンハッタン計画に携わったシカゴの科学者のグループが、核兵器の脅威の高まりについて国民に知らせるために作られた月刊ニュースレター「シカゴ原子科学者会報」を創刊した。

1946 年、シカゴ大学のキャンパスにいるユージン・ラビノビッチ (右から 2 番目)。© Sage Journals

2年後、ラビンチとゴールドスミスはニュースレターを本格的な雑誌に拡大することを決定し、物理学者でガゼット誌の会員であるアレクサンダー・ラングスドルフの妻である芸術家のマーティル・ラングスドルフに表紙のデザインを依頼した。

1940 年代のマーテル・ラングスドルフと彼女の娘。 ©ワシントンポスト

最初、マーテルはウランを表す巨大な「U」の文字を描くことを考えたが、Bulletinの他の科学者たちの会話を聞いて、出版物の本質は核兵器そのものではなく、核兵器がもたらす地球規模の大惨事の重大なリスクにあることに気づいた。したがって、原子科学者会報のウェブサイトには次のように記されている。

「彼女は真夜中まで刻々と進む時計の針を描いた。それはまるで原爆の爆発までのカウントダウンのように、もし誰もそれを止める行動を取らなければ起こるであろう破滅を暗示していた。」

終末時計は、1947 年 6 月にガゼット紙の表紙に初登場し、時針は真夜中の 7 分前を示していました。この位置にはもともと特別な意味はなかったが (マーテルは「美的理由」でポインターをそこに置いたと認めている)、それでもその後のすべての調整の基準となった。

1947 年 6 月の原子科学者会報の表紙。© Medium

変化を起こすかどうか、またどの程度変化させるかについての決定は、前年からの技術や地政学的な変化に基づいて毎年 1 月に行われます。当初、この決定は創刊編集者ユージン・ラビノビッチ自身によってなされたが、1973年に彼が死去した後、この作業は、現在13人のノーベル賞受賞者を含むスポンサー委員会と協議した上で、ブレティンの科学・安全保障委員会によって引き継がれた。

創設以来74年間で、終末時計は25回変更されました。最初の変更は1949年、ソ連が初の原子爆弾を爆発させたことに対する反応として行われた。この出来事により冷戦の状況は劇的に変化し、ガゼットは時計を真夜中の3分前に移動させた。時計を真夜中に向けて進めるきっかけとなった他の出来事としては、1960年代初頭のフランスと中国による核兵器開発、1968年のベトナム戦争の激化、1980年のロナルド・レーガン大統領の軍縮交渉からの撤退などがある。一方、時計の針を戻すきっかけとなった出来事としては、1957年から1958年にかけての国際地球観測年における世界中の科学者の協力、1963年に米国とソ連が署名した部分的核実験禁止条約、そして1989年のベルリンの壁崩壊などがある。

1947年から2020年までの終末時計の針の動きを示すグラフ。© Fastfission/Wikipedia/Javier Hirschfeld

2020年以前、時計が真夜中に最も近づいたのは、米国とソ連が6か月以内に初の熱核兵器実験を行った1953年（2分）であり、真夜中から最も遠かったのは、ソ連崩壊後の1991年（17分）であった。

1953年、アメリカはネバダ核実験場で大砲を使った核爆弾実験を実施した。 © ウィキペディア

不思議なことに、1962 年のキューバ危機は、世界が全面核戦争に最も近づいた出来事であったが、その危機は、その議論のために Bulletin が召集される前に解決されていたため、時計にはまったく影響がなかった。さらに、この危機は、モスクワ・ワシントンホットラインの設置など、世界政策の大きな変化をもたらし、世界をより安全な場所にしました。

そのシンプルさと直感的な即時性により、終末時計はすぐに冷戦の象徴となり、アイアン・メイデンの「真夜中まであと2分」やアラン・ムーアの『ウォッチメン』など、数え切れないほどの人気アート作品に影響を与えました。

時代が変われば、終末時計も変わります。 2007年、デザイナーのマイケル・ベイルートは時計のデザインをアップデートして、より現代的な雰囲気を与えました。そして2009年にガゼットが印刷からデジタル出版に切り替えた際に、時計の画像も変更され、現在はガゼットのウェブサイトのロゴとして掲載されています。 2016年、ザ・ガゼットは実物の終末時計も発注し、シカゴのオフィスのロビーに掛けられ、毎年何千人もの訪問者を集めている。

ベルリンの壁崩壊: 1989 年 11 月下旬、東ドイツの兵士が壁の割れ目から西ドイツ人と会話している。© wikipedia

その他の変更はより根本的なものです。終末時計は長い間、核戦争の脅威と関連付けられてきましたが、近年、この速報は気候変動、バイオテクノロジー、サイバー戦争、さらには人工知能など、より現在および新たに出現している文明の脅威に焦点を当て始めています。実際、ガゼットが2020年に終末時計を午前0時100秒前に移動した理由は次のとおりです。

「人類は、核戦争と気候変動という二つの存在を脅かす脅威に同時に直面し続けており、サイバー情報戦争という脅威の増幅要因によって、社会の対応能力が損なわれています。国際安全保障の状況が悲惨なのは、これらの脅威の存在だけでなく、世界の指導者たちが、それらを管理する国際政治基盤の崩壊を許したためでもあります。」

それでも、核戦争の脅威は時計の設定において依然として重要な要素であり、それは2007年に北朝鮮の核実験とイランのウラン濃縮活動再開を受けて時計が午前零時5分前に進められたことからも明らかである。

終末時計は象徴的な存在であるにもかかわらず、長年にわたって批判も受けており、多くの人が掲示板の時計の針を合わせるプロセスや、世界的リスクの指標としての時計の価値に疑問を呈している。こうした批判の多くは、時計のリスクの表現に焦点を当てているが、オックスフォード大学人類の未来研究所のアンダース・サンドバーグ氏など一部の人は、時計には本質的に欠陥があると主張している。

サンドバーグ氏によれば、時計によって測定されるさまざまなリスク要因は根本的に異なるため、簡単に比較することはできないという。それらはすべて人工的に作成されたものであり、次のことを意味します。

「…従来の確率推定方法は不十分なだけでなく、誤解を招く恐れがあります。[時計]は正確な測定単位ではなく、複数の要素を組み合わせたものです。核戦争だけなら最初は簡単に推定できるかもしれませんが、私たちが直面している潜在的な脅威は他にもあります。」

しかしサンドバーグ氏は、たとえ核戦争にのみ適用されたとしても、時計そのものはリスク指標としては不十分だと述べている。なぜなら、その容赦ない「カウントダウン」モードは、地球規模の災害が私たちが積極的に回避できるものではなく、避けられないものであることを示唆しているからだ。さらにサンドバーグ氏は、人類が災害にどれほど近づいているかを警告するというこの時計の基本的な使命は、実際には逆効果かもしれないと主張し、次のように指摘している。

「真夜中の3分前に人生をスケジュールすることはできません。」

オクラホマ大学の科学史研究者キャサリン・パンドラ氏も同意する。

「当局が差し迫った緊急事態を宣言することは、国民の注意を引き、即時の行動を起こせるように準備させる効果的な方法であり、これが、終末時計が午前0時まで数分で破壊されるという論理の背後にある。何世代にもわたって緊急事態を維持するよう要求することは、自己矛盾している。この指令の意図しない影響は、当面の問題の解決を妨げ、専門家と非専門家の間の協力関係を損なう可能性がある。終末論的なレトリックを使用することは、民主主義において困難で複雑な問題を議論するのに役立つとは思わない。」

それでも、パンドラ氏は、新たな地球規模の脅威について国民に情報を提供し続けるという原子力科学者会報の努力を称賛し、「会報の報告書で得られた結論は、膨大な研究と分析の結果であり、私たち全員が重要な問題について話し合うきっかけとなるツールです」と述べた。

終末時計は右派の評論家からも批判されており、ジャーナリストのジョン・マーライン氏の言葉を借りれば「リベラル派の不安測定器に過ぎない」と非難されている。これらの批評家は、創刊編集者ユージン・ラビノビッチが「ガゼットの時計は国際的な権力闘争の盛衰を記録するメーターではなく、核時代における人命に対する継続的な危険のレベルの変化を反映することを目的としている」と主張しているにもかかわらず、

© ギファー

このため評論家らは、このブレティンが「フェイクニュース」を文明に対する実存的脅威としての核戦争と同一視していると非難した。

しかし、リベラル派、保守派を問わず、ほとんどの批判は終末時計の根本的な意味を理解していないようだ。同社のウェブサイトの発表では次のように述べられている。

終末時計は予測ツールではなく、私たちは未来を予測しているわけではありません。代わりに、私たちはすでに発生した出来事や既存の傾向を研究します。私たちの科学安全保障委員会は、世界の核兵器の数と種類、大気中の二酸化炭素の割合、海洋の酸性化、海面上昇率など、数字と統計を追跡しています。委員会はまた、危険を軽減するための指導者や国民の努力、および政府、市場、市民社会組織などの機関による交渉による合意を実施するための努力も検討した。

コミュニケは、医師が診断を下すのと少し似ています。私たちは、医師が臨床検査やレントゲンを見るのと同じようにデータを見ると同時に、医師が患者や家族と話すときに行うように、定量化が難しい要素も考慮に入れます。できるだけ多くの症状、測定値、状況を考慮します。

コミュニケは、終末時計が本質的に、そして常に、議論を喚起し行動を促すために設計された、世界的なリスクのわかりやすい象徴であると認めた。政治的党派主義の非難に対して、この速報は次のような厳しい警告を発している。

「我々の社会と人類の生存を確保することは政治的課題ではない。極めて危険な技術の制御を達成するために他国と協力することは、党派政治を伴うべきではない。この報告書に携わる科学者が核兵器と気候変動に関する現在の政策に批判的であるのは、これらの政策が自滅の可能性を高めるからである。」

もう一人の共同創設者であるラビノビッチ氏は、終末時計の目的は「人々を怖がらせて理性を取り戻させ、文明を守ること」だと語った。

終末時計を設計した科学者たちは、かつては緊迫感に満ちていると考えていた7分が、その後の20回以上の時計の針の調整で比較的「緩い」時間点であると判明するとはおそらく予想していなかっただろう。終末時計は誕生以来、25回調整され、8回遅くなり、17回早くなりました。そのうち、「午前0時」から7分離れたところで維持されたのは4回、7分以上が8回、7分未満が13回でした。世界の終わりに最も近い時間は、今年は90秒、2020年は100秒です。

ジル・メシエ

翻訳者：tamiya2

校正/時間

原文/www.todayifoundout.com/index.php/2023/01/whats-up-with-the-very-real-doomsday-clock/

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、tamiya2によってLeviathanに掲載されています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。