私が見ている青はあなたが見ている青と同じですか？

目の生理機能は多様で、脳は画像を異なる方法で処理し、人間はさまざまな言語を話し、さまざまな環境で生活しています。これらの要素が絡み合うことで、私たちは色彩豊かな世界を独自の方法で捉え、表現できるようになります。

ニコラ・ジョーンズ

翻訳：李克

校正・翻訳｜陳暁雪

色は物理的な現実のように思えるかもしれませんが、私たちの色に対する認識は、生物学、心理学、文化、言語などあらゆるものの影響を受けます。画像出典: Knowable Magazine

木々や空、夕焼けは何色だと思いますか？答えは明らかだと思うに違いありません。しかし、個人間および異なる文化グループ間では、世界に対する人々の見方に大きな違いがあることが判明しました。

目の生理機能、脳が画像を処理する方法、色について話すときに使用する言語はすべて、私たちが色を認識し話す方法に影響を与え、これらの要素自体にも変化の余地があります。

目の生理学的構造だけから判断すると、ほとんどの人は短波錐体、中波錐体、長波錐体の 3 種類の錐体を持っています。目の光受容体として、さまざまな種類の錐体細胞がさまざまな波長の光を感知する役割を担っています。しかし、遺伝子変異によっては、特定の種類の錐体細胞に異常が生じたり、完全に失われたりして、個人の色覚に変化が生じることがあります。これらの人々は、私たちが一般的に色覚異常と呼ぶ人々である可能性があり、あるいは色覚の超能力を持つ人々である可能性もあります。

さらに、性別、年齢、生まれた時間や季節、さらには虹彩の色も、色の認識方法にさまざまな程度で影響を与えます。

では、色覚の違いに関して他にどのような興味深い疑問があるのでしょうか?最近、Knowable Magazineは、2022 Annual Review of Vision Scienceで人間の色覚の違いに関する研究論文を発表した英国サセックス大学の視覚神経科学者、ジェニー・ボステン氏にインタビューしました。

Q1: 虹には何色ありますか?

ジェニー・バートン：物理的には、虹は連続したスペクトルです。可視範囲では、光の波長は両端の間で滑らかに変化し、線や急激な変化はありません。この範囲内で、人間の目は 7 色よりはるかに多くの色を識別できますが、通常、虹は赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫の 7 色であると言われています。このように、歴史と文化は色覚の説明に影響を与えます。

Q2: あなたは自分の子供にも同じことを言っていますか?彼らは今10歳と5歳ですか？

ジェニー・バートン：私は子供たちの自然な色彩感覚を観察することに興味があったので、色彩については何も教えませんでした。たとえば、私の5歳の娘は「あの青い建物に行くの？」と言います。私にとって、それは青い空を背景にした白い建物です。子どもたちは最初、空を白と呼び、その後ゆっくりと空を青と認識することを学ぶと言う人もいます。私は子供たちのこうした潜在的な可能性をすべて観察することに興味があります。

Q3: 世界中のほとんどの人は、赤、黄、青の基本的な色相について同じ見解を持っていますよね?

ジェニー・バートン：さまざまな文化における色の分類形式を記録したビッグデータがすでに存在しており、そのデータから、これらの分類には共通点があることがわかっています。これは、人間が色を分類することを学ぶ際に、特定の生物学的限界があることを示唆しています。しかし、すべての文化に同じ数のカテゴリーがあるわけではありません。そのため、色の分類は文化的なものであり、色彩文化の進化が色の分類の変化を引き起こしていると考える人もいます。

ある文化の言語では、最初は色を 2 つか 3 つしか区別していないかもしれませんが、時間の経過とともにカテゴリの複雑さが増していきます。たとえば、古ウェールズ語では、青と緑に区別はなく、どちらも「Grue」（緑）のカテゴリに属します。ロシア語には、青色を表す単語が 2 つあります。「siniy」（濃い青）と「goluboy」（薄い青）です。それでは、このように区別する話者は色彩に対する認識が異なると言えるのでしょうか?それともそれは単に言語学上の問題なのでしょうか?まだ結論は出ていないと思います。

Q4: 2015年に、スカートのストライプが白と金色か青と黒かという議論がネット上で起こりました。なぜ人々の意見はこんなにも違うのでしょうか?

ジェニー・バートン：科学者たちもこの写真に非常に興味を持っています。当時は関連する研究が数多く行われ、ある雑誌ではこのテーマに関する特集号も出版されました。これらの研究が最終的に一致していることの 1 つは、ドレスの色は、ドレスがどのような照明の下で見えるかによって大きく左右されるということです。スカートに青と黒のストライプがあると思う人は、光を明るい黄色がかった色として見ますが、スカートにプラチナのストライプがあると思う人は、光をぼんやりとした青色として見ます。つまり、衣服にどのような光が当てられているかを判断するのは、最終的には脳なのです。

2015 年の有名な「ドレス」の写真は、照明をどう捉えるかによって、人によって解釈が異なります。画像出典: KNOWABLE MAGAZINE DH BRAINARD & AC HURLBERT / CURRENT BIOLOGY 2015 より改変
しかし、次の疑問は、なぜ人々は照明をそれほど異なって認識するのか、ということです。異なる照明条件下では、人によって異なる体験をする可能性があります。たとえば、青色の LED ライトや暖かい太陽光に慣れている、または見慣れているなどです。照明条件の判断は、加齢とともに目に起こる生理的変化など、他の要因によっても影響を受けます。

Q5: 個人間の色覚の違いの最も明白な理由の 1 つは、遺伝子変異によって引き起こされる錐体細胞の異常です。これらの異常にはいくつの種類がありますか?

ジェニー・バートン：人間には 3 種類の錐体細胞があり、そのバリエーションの組み合わせは実に多種多様です。現在、私たちがよく知っているのは、長波錐体（L、主に赤色光を感知）と中波錐体（M、主に緑色光を吸収して感知）のバリエーションです。どちらのタイプの細胞も、対応する光感受性オプシンを発現しており、光を受け取ると形が変化し、その波長に対する細胞の感受性を決定します。各オプシンをコードする遺伝子には 7 つの多型部位があるため、変異の組み合わせの数は膨大になります。

Q6: 一般的な色覚異常として、赤緑色覚異常があります。原因は何ですか?

ジェニー・バートン: 赤緑色盲は、L 型または M 型錐体の異常によって引き起こされる重度の赤緑色覚障害です。患者は特定のタイプの円錐を欠いているか、または 2 種類の円錐が機能していない可能性があります。

赤緑色覚異常は、イギリスの化学者ジョン・ドルトン（1766 年 9 月 6 日 - 1844 年 7 月 27 日）にちなんで、ドルトン症とも呼ばれます。ジョンは自分の色覚がほとんどの人と目立って違うとは思っていませんでしたが、場合によっては自分の色の説明が周りの人とは違っていても、兄と同じであることに気付きました。彼は、これは目の中の余分なフィルターが原因だと考えている。何年も後、科学者たちは彼のDNA配列を解析し、彼が二色型色覚者であることを発見した。

もう一つのより軽度なタイプの色覚異常は、異常三色型色覚症です。これらの人々は、前述の 2 つの異なるタイプの錐体を持っていますが、異なる波長の光を認識するはずの 2 種類の錐体は、同様の波長認識範囲を示すため、赤と緑の違いを知覚する範囲は狭くなります。

ほとんどの人の目には 3 種類の錐体光受容細胞があり、それぞれ異なる波長、つまり色の光に最も敏感です。錐体細胞に欠陥があったり欠損していたり​​する人もいれば、4 種類の錐体細胞を持つ人もいます。画像出典: WIKIMEDIA COMMONS KNOWABLE MAGAZINE
Q7: より重篤な病気の人にとって世界はどのようなものでしょうか?

ジェニー・バートン：二色型色覚者は、基本的に色覚の軸全体を失っており、色覚は一次元です。それがどのようなものであるかについては、私たちには主観的にその次元の 2 つの極が何であるかがわからないため、私には言うのが難しいです。この軸は、通常の色空間ではバイオレットとライムグリーンの間の軸として説明されることが多いです。しかし、実際には、それは任意の 2 つの知覚される色合いである可能性があります。これについては、まだよく分かりません。

片方の目だけに異常がある二色型色覚者もいます。研究者たちは、二色型色覚者が見る色を通常の三色型色覚者が見る色と比べるように依頼し、二色型色覚者は私たちが予想するよりも多くの色を見ることがあることを発見した。しかし、これが典型的な二色型色覚者が見ている色であるかどうかは分かりません。なぜなら、彼らには脳内で点と点を結びつけるのに役立つ三色型色覚者がいないからです。

Q8: 色覚異常があると、色が常に単調になるのでしょうか?色覚を高める遺伝子変異はあるのでしょうか?

ジェニー・バートン：ほとんどの場合、色覚異常により、識別できる色の数が減ります。しかし、特殊なケースでは、異常な三色型色覚者は異なる波長に敏感な錐体を持ち、通常の三色型色覚者が区別できない特定の色を区別することができます。この現象は観察者メタメリズムと呼ばれます。

もう 1 つのタイプの人は、変異した錐体オプシン分子と正常な錐体オプシン分子の両方の遺伝子を持つ 2 つの X 染色体を持つ四色型色覚者です。そのような人が存在することはわかっていますが、彼らが余分な錐体細胞を使って色覚の新たな次元を獲得し、通常の三色色覚者が見ることも区別することもできない色を見ることができるかどうかはわかりません。

かつて、異常な三色型色覚者を検査するテストがありました。観察者は赤色と緑色の光を混ぜて黄色を作り出さなければなりませんでしたが、黄色に一致する混合物を見つけられない人もいました。 2 色ではなく 3 色を混ぜる必要があります。つまり、通常の 3 つの原色ではなく、 4 つの原色があります。これがなぜ、どのように起こったのか、あるいは彼らが何を見たのかを正確に証明するのは難しい。

類似の画像は、人が色覚異常かどうかを判断するためによく使用されます。ほとんどの人は数字を円で見ることができますが、色覚に欠陥がある人、錐体細胞が欠損または変形している人は、色のついた数字を区別できない場合があります。

Q9: これらの人々は、自分たちが超色覚を持っていることを知っていますか?

ジェニー・バートン：私たちは、自分の色覚の状態を知らない女性たちを募集しました。 50% 以上の被験者には 4 種類の錐体細胞が見られました。しかし、通常、2 種類の錐体細胞はわずかに異なるだけなので、4 色型視覚を生み出すには不十分な場合があります。

人々の色に関する主観的な経験は非常に個人的なものであり、自分の色覚が周囲の人々の色覚とどのように比較されるかを知ることは困難です。ジョン・ドルトンは 1798 年に赤緑色盲を初めて発見した人物ですが、それ自体はかなり最近のことです。彼は真面目なタイプだったが、自分ではそれをあまり自覚していなかった。

Q10: 遺伝子以外に、色覚に影響を与える生物学的差異はありますか?

ジェニー・バートン：水晶体は加齢とともに、特に40歳を過ぎると黄色くなり、この変化によって網膜に到達する青色光の量が減ります。ルテインとゼアキサンチンは黄斑色素としても知られ、青色光を吸収し紫外線を遮断する色素です。食事は色素の沈着に大きな影響を与えます。黄斑色素は緑葉野菜などの野菜に由来します。食べれば食べるほど色素が濃くなります。虹彩の色と色彩識別能力の間にも、若干の相関関係があります。これは、非常に正確な色彩識別をどの程度うまく行えるかを決定する要因である可能性があり、青い目の人は茶色の目の人よりも色彩識別テストでわずかに良い成績を収めるようです。

Q11: 私たちの色の知覚は周囲の環境によっても影響を受けるのでしょうか?言い換えれば、もし私が緑のジャングルや黄色い砂漠で育ったら、虹のその部分でより多くの色を区別できるでしょうか?

ジェニー・バートン： はい。これは現在、色彩科学における注目の研究テーマです。たとえば、ある言語に緑と青を表す別々の単語があるかどうかは、ある程度、その文化集団が大きな水域の近くに住んでいるかどうかによって決まるようです。繰り返しますが、これは言語的な問題であり、これが実際の認識に影響を与えるかどうかはわかりません。

黄色に対する人々の認識は季節によっても影響を受けます。ヨークで行われた研究では、冬は灰色で陰鬱で、夏は緑が豊かで美しいという現象を分析し、純粋な黄色の波長に対する人々の認識は季節によって変化し、その変化は小さいものの、測定可能であることがわかった。

生まれた季節も色覚に影響を及ぼします。特に北極圏で生まれた場合は、その影響は大きくなります。これは、視覚の発達中に浴びた光の色と関係があるかもしれません。

環境の影響は、相反する 2 つの方法で色の知覚に影響を及ぼします。異なる環境は個人の知覚の違いにつながりますが、共有された環境は生物学的な違いを相殺し、人々の色の知覚をより似たものにすることもできます。

Q12: 違いが非常に多いため、すべてを分離したり、生理的なものか文化的なものかを区別したりするのは難しいようです。これは私たちを哲学的な難問に戻します。私が見ている青はあなたが見ている青と同じでしょうか?

ジェニー・バートン： はい。私は色彩、特に色の主観的な体験がとても魅力的だといつも思ってきました。脳がこれをどのように感知するかは謎のままです。この問題の研究に専念しようと決めるずっと前から、私はこの疑問について考えていました。

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この記事は、Annual Reviews 傘下の雑誌 Knowable Magazine から翻訳することを許可されています。 Annual Reviews は、科学研究者に高度に要約された包括的な情報を提供することを目的とした非営利団体であり、レビュージャーナルの出版に重点を置いています。
原題：「色は見る人の目と脳の中にある」、著者：ニコラ・ジョーンズ、2022年10月27日Knowable Magazineに掲載。
リンク: https://knowablemagazine.org/article/mind/2022/science-of-color-perception

出典：サイ氏