この孤独な宇宙において、人間は例外なのでしょうか?

リヴァイアサンプレス:

アインシュタインはかつてこう言いました。「宇宙の永遠の謎は、それが理解可能であることです。宇宙を理解できることは奇跡です。」しかし、理解可能性とはどのように定義されるのでしょうか?楽観主義者は、近い将来、今日の人間を超え、自ら進化できる機械知能、あるいは他の形態の超知能の出現によって、技術的特異点が引き起こされるだろうと信じている。彼らの知能は現代人類をはるかに超えるため、技術の発展は人類の理解を完全に超えるものとなり、その発生を予測することさえ不可能となるでしょう。

悲観論者もいる。米国の特許数や世界の技術革新の状況から判断すると、人類の技術革新の速度は 1873 年にピークに達し、その後減速し始めました。テクノロジーの背後には数学と科学があります。後者の 2 つの限界は、私たち人間の認識と宇宙に対する理解を制限するのでしょうか?記事の著者が述べたように、ゾウリムシも犬も物理的現実の性質について考えることはないと信じているのなら、私たちホモサピエンスはどのようにして認識の限界を証明できるのでしょうか（将来、より高度な地球外文明が発見された場合、それは別の問題です）。

私の犬は本当に賢く、ある程度の知能がなければ不可能なことをたくさんやってきましたが、それでも想像もできない、考えもできない概念がいくつかあるのではないかと思います。彼は命令に従ってじっと座ったり、ボールを取ってきたりはできるが、ドッグフードが入っている金属の缶が加工された石でできていることに気づくことはまずないだろう。

空をゆっくりと横切る白い線が、やはり加工された石で作られた機械によって作られたものだと彼が想像できたかどうかは疑問だ。また、空を飛んでいる改造されたドッグフードの缶が小さく見えるのは、単に高く飛んでいたからだけだと彼が想像できたかどうかも疑問だ。

また、私の犬に少なくともこれらの概念が存在することを確実に知らせる方法はあるのでしょうか?この疑問が私の心の中に広がるのに、それほど時間はかかりませんでした。やがて、私は自分が知らない概念があるのではないかと考え始めました。その背後にある原理はおろか、考えたこともなかった概念です。私の想像の限界を超えた物事を理解する方法はあるのでしょうか？

これらの質問に答えようとする過程で、さらに多くの疑問が生まれました。この記事では10の質問を順番に紹介していきます。これらの質問は、私の元々の質問を理解し、彼らの興味を理解し、それに答えるのに役立ちます。これは確かに私たちに密接に関係しています。

私たちは想像の限界を超えた物事を理解することができるのでしょうか？もしそうなら、これらのことのどのような側面を理解できますか?こうした疑問は、人間の知能に関わる生物学的機能と部分的に関係し、また、言語と数学といった私たちの最も偉大な認知理論と部分的に関係しています。同時に、そのような疑問には、私たちの世界を超えた物理的な現実が存在するのか、あるいはコンピューター内で無数のシミュレートされた現実を実行している高度な非人間生命体の文明が存在するのか、という疑問も含まれています。

さらに、この種の質問は当社の技術製品にも関連しています。技術的な観点から、これらの「子供たち」は将来、私たちの認知レベルを超えるのでしょうか?以下の10の質問から判断すると、人間例外主義の理論は危うい状況にある[1]。

おそらく私たちは、認めたくはないが、犬（または単細胞のゾウリムシ）に似ているのかもしれない。人類の歴史には、人間の創意工夫による数え切れないほどの勝利がありましたが、次の質問はまったく異なる様相を描き出します。私は、言語、科学、数学など、今日の人間の成果がいかに深刻かつひどく限られているかを強調したいと思います。

1. 漠然と定義された尺度で言えば、私たち人間は賢いのでしょうか、それとも愚かなのでしょうか?

この問題は複雑ではないようです。長い間、地球上の生物の最高レベルの知能は、非常にゆっくりと成長し、停滞さえしていました。現在でも、人間の脳は動きに関連する感覚情報を処理する際にさまざまなアルゴリズムのトリックを使用することが多く、脳が実際に考えることをできるだけ少なくしています。

つまり、知能を得るには人体に多大な犠牲を払う必要があるということです。脳の単位質量あたりの代謝コストは膨大で、人体の他のほとんどの臓器（心臓と肝臓は例外）のそれをはるかに上回っていることが判明しました。したがって、臓器が賢ければ賢いほど、より多くの栄養素が必要となり、そうでなければ死んでしまいます。進化論の観点から見ると、賢くなるということは実は愚かさの兆候です。

これまでのところ、脳のハードウェアがどのようにして抽象的な知性をもたらすのかはわかっていません。脳がどのように意識を生み出すのかはわかっていません。しかし、より高い知能には必然的により大きな脳サイズとより高い代謝コストが必要であることを考えると、ホモ・サピエンスが生態学的ニッチ内で生き残ることができる限り、進化は人類が抽象的知能の最低レベルに留まることを許容するかもしれない。

ご存知のように、最低限の知能さえあれば、人類は幸運にも新石器時代革命が起こるまで、何百万年もの間狩猟採集民として生き延びるのに十分でした。

©NPR

この結論は正しいでしょうか?

私たちが賢いか愚かかという疑問に本当に答えるには、まず知性にはいくつかの種類があることを理解する必要があります。外界を認識する能力は一種の知性、認知能力です。過去の出来事を記憶する能力も一種の知性である。将来の行動を計画する能力も一種の知性です。さらに、他の生物が持っているが人間にはない認知能力も数多くあります。

これは、人間が作り出した知能だけを考えても当てはまります。現代のデジタルコンピューターは、非常に多くの計算タスクを実行する点で人間よりはるかに優れています。人間が発明したデジタルコンピューターよりも優れたパフォーマンスを発揮する認知タスクも少数存在しますが、こうしたタスクの数は時間の経過とともに減少しています。

おそらく、人間の数学は現実の一角、それも非常に小さな一角を示しているだけなのでしょう。

この状況はまだ変わる可能性があります。地球上の将来の生命の能力は、現在のデジタルインテリジェントコンピュータの能力を上回る可能性が非常に高いです。認知能力が誇張されているというこの感覚は、歴史上私たちの時代に特有のものではありません。地球上のすべての生物の集合的な認知能力を考えてみましょう。この集合的な認知能力が何十億年もの歴史の中でどのように変化してきたかを示すグラフがあると想像してください。

どのような洗練された時間変動分析技術を使用しても、いわゆる「認知能力」をどのように視覚化しても、地球上の生命の全体的な認知能力の変化の曲線の傾きは厳密に正でなければならないという結論に達することができると断言できます。結局のところ、地球の生物圏の生物が持つ最高レベルの認知能力が低下した段階は歴史上一度も存在したことがない。生物圏全体は、さまざまな生物の認知レベルを向上させる能力を一度も失ったことはありません。

また、時が経つにつれ、地球上のあらゆる生物のさまざまな認知能力が深まってきただけでなく、認知能力の種類も向上し、つまり、地球上の生命はますます多くの認知能力を発達させてきました。地球上の生命は、さまざまな意味で賢くなっています。この傾向が将来も続くと信じるならば、将来、地球上のどの生命（私たち人間も含む）も持っていない強力な認知能力を持つ、いくつかの、あるいは複数の種類の生命が存在するだろうと結論づけざるを得ません。

私たちは、人類が全体としていかに賢いかをしばしば自慢しますが、将来の人類（さらには地球上の他の将来の生物）と比較すると、現在の私たちの認知能力は非常に限られているとしか言いようがありません。

しかし、この結論を良心をもって受け入れる前に、以前の認知能力マップをもっと詳しく見る必要があります。実際、約 5 万年前まで、地球上の生命の全体的な知能は着実にゆっくりと成長していました。しかし、ホモ・サピエンスが、やがて近代科学、芸術、哲学を生み出す発展の軌道に乗り始めると、地球上の生命の全体的な知能レベルは飛躍的に向上しました。

現時点では、私たちはまだこの「飛躍」の途中にあり、知能のレベルは加速度的に大幅に向上する可能性があるようです。同時に、私たちが持つ知性の種類の数は、私たちの祖先のそれをはるかに上回っています。

2. 人類の祖先の認知能力と現代の科学者、芸術家、哲学者の認知能力の間には大きな隔たりがあるようです。その理由は何でしょうか?

サバンナに生息する毛のない類人猿にとって、素粒子物理学の標準モデル、チャイティンの不完全性定理、禅の寓話「牛飼い十題」など、人間の認知宮殿の奥深くに埋もれている宝物は、身体の健康に明らかな利益をもたらさないだろう。実際、これらのスキルを習得するには、莫大な健康コストがかかる可能性もあります。では、なぜ現代人はこうした能力を持っているのでしょうか?

この質問に答えるには、まず人類の最も普遍的な成果であり、人間の認知能力の最も鮮明な実証でもある科学と数学に目を向ける必要があります。科学と数学の助けにより、人間の認知能力は大きく向上し、思考は大きく広がり、印刷機から人工知能に至るまで多くの技術的成果を生み出しました。

さらに、文化的および技術的な発展は時間の経過とともに蓄積され、最終的にはオープンマインドな思考のプラスの効果を増幅します。後者は、文化的および技術的な発展を加速させます。この好循環により、人間の認知能力は遺伝と進化のみで達成できるレベルをはるかに超えるようになり、人類の祖先と現代の科学者、芸術家、哲学者との間の認知ギャップにつながる可能性さえあります。

しかし、この好循環は、私たちの本来の認知能力（遺伝と進化を通じて獲得したもの）を向上させるものの、まったく新しい認知能力を提供できるかどうかはまだ明らかではありません。真実は、このサイクルでは決してこれが達成されないかもしれないということだ。もしこれが真実であるならば、この好循環によって生み出される科学と数学は、将来においても、その好循環が最初に始まったときに人類が持っていた本来の認知能力の限界を決して打ち破ることはできないだろう。

これは、人類の祖先と現代人の認知能力の大きな違いに対するもう一つの説明にもなります。おそらく、この違いは「溝」ではなく、より正確な説明は「広大な知識の分野における小さなギャップ」であるべきでしょう。ハンガリー系アメリカ人の理論物理学者ユージン・ウィグナーは、「自然科学における数学の不合理な有効性」（1960年）[2]と題した論文の中で、 「なぜ私たちの数学理論は物理的現実の本質を「それほど効果的に」捉えることができるのか？」という疑問を提起した。

その答えは、私たちの数学がまったく機能せず、現実のほんの一部、それも非常に小さな部分しか捉えていないということなのかもしれません。数学がこれほどうまく機能するのは、私たちの視野がこの小さな一角、つまり私たちが想像できる物理的現実のごくわずかな領域に限定されているからであるように思われます。

すると、興味深い疑問は、なぜ人類は先祖が生き残るために必要としていたものよりもはるかに優れた思考能力を発達させたのかということではなく、私たちの思考能力が現実を理解するために必要な最低限のレベルに達しているかどうかということである。

3. このような強力な知的能力があれば、私たちが想像もできなかった物理的現実のレベルに到達できる、まったく新しい形の科学や数学を創造することは可能でしょうか?それとも、私たちは永遠に現在の科学と数学の形態に閉じ込められてしまうのでしょうか?

1927年、イギリスの科学者ジョン・バードン・サンダーソン・ホールデーンは、彼のエッセイ集『可能世界』の中で、この質問の初期のバージョンを提起しました。 「私は今、宇宙は私たちが予想していたよりも奇妙なだけでなく、私たちが推測できるよりも奇妙なのではないかと考えている」と彼は書いている。

その後の数年間で、同様の主張が浮上し、いずれも宇宙は私たちが「想像」したり「考え」たりできるよりも「奇妙」であると示唆した。しかし、こうした見解を主張する人々はそれぞれ独自のキャリアを持っているため、基本的にこうした問題の具体的な意味合いについては議論しません。

彼らの見解は通常、人間の思考能力自体の限界を突破することはできないというよりも、現在の科学的知識の限界のために、宇宙は私たちが現在想像できるよりも奇妙である、というものです。たとえば、ハルデーンは、私たちが「異なる視点に立つ」ことで現実が明らかになると信じています。「いつの日か、人間はこの記事で私が想像したことを実現し、人間以外の心の視点から物質の客観的存在を見ることができるようになるでしょう。」

その後の数十年で、この疑問の別のバージョンが学術文献に現れ始めました。主に「意識の性質」[3]とそれに密接に関連する「心身問題」[4]の研究で現れました。意識と心に関するこれらの研究は、人間を超える知性を求めて、タコ、ウイルス、昆虫、植物、さらには生態系全体の視点から物事を見ようとするハルデーンの考えを反映しています。

これらの研究の多くは非公式なものであり、意識の本質に関する疑問の曖昧で判断が難しい性質を反映しています。幸いなことに、人間の思考が現在の限界を突破できるかどうかという疑問を、より厳密な方法で探求することはまだ可能です。

最近非常に人気のある見解（実は最近だけではなく、かなり以前から存在している）を例に挙げると、私たちが住んでいる宇宙は、非常に強力な技術力を持つ異星人によって作られたコンピューターによって作られたシミュレーション世界であると多くの人が考えているということです。この見方は実際には無限に拡張できます。おそらく、人間の宇宙をシミュレートしたこれらのエイリアン種族自体も、より高度な技術力を持つエイリアン種族によって作成されたコンピューターシミュレーションの世界に住んでおり、同じである可能性があります。

別の観点から見ると、そう遠くない将来、私たち人間がシミュレートされた宇宙を創り出し、そこに「認知能力」を持つ生物を住まわせることは十分可能です。さらに、これらのシミュレートされた宇宙の生物も、独自のシミュレートされた宇宙を作成することができます。最終結果は、知的種族が層状に増えていくことです。各層ではコンピュータを使用して宇宙をシミュレートし、次の層の知的種族を生み出します。私たち人間はこれらの層の 1 つに存在します。

それで、「私たちはシミュレーションの中で生きているのか？」という疑問が湧きます。少し複雑になります。確かに、あるレベルの生物にとっては、私たち人間はシミュレーションの中で生きています。しかし、他のレベルの生物については、私たちはシミュレーションの中で生きているのではなく、むしろそのシミュレーションを私たちが作ったのです。議論のために、前提を、人間はシミュレートされた世界に住んでいるという事実に限定します。これで次の質問に移ります。

4. コンピューターシミュレーション内でのみ生息する生物が、正確なコンピューターシミュレーションを通じて「高等」生物を創造した可能性はありますか?

もし答えが「いいえ」ならば、この宇宙で私たちが考えるすべてのものは、高次の存在が持つすべての知識のほんの一部に過ぎません。同時に、それは私たちが想像もできない、より深い現実が存在することも意味します。

もちろん、この質問に対する答えは、「シミュレーション」と「コンピュータ」という用語の正確な定義にも依存します。しかし、形式システム理論とコンピュータサイエンスの多くの法則によれば、どの定義を使用しても、この質問に対する答えは「ノー」です。

人間の認知能力の限界を示すこれらの定理については、ここでは詳しく説明しません。その代わりに、私は一歩下がって、これらの定理を人間の数学の内容の例として、人間の数学的能力の例として、人間の思考の例として見たいと思います。つまり、人間の数学のかなりの部分は、私たちの認知能力が非常に限られており、現実を完全に理解するには不十分であることを証明しています。しかし、これら以外の数学の内容はどうでしょうか?

5. 内容に関係なく、人間の科学と数学の形態は、私たちの認知能力が非常に限られていることを示しているのでしょうか?

どの数学の教科書を開いても、公式の後に説明文が書かれているのが分かります。人間の数学は、実際には、これまでに作成されたすべての数学の教科書に記載されているすべての公式と説明文の合計です。

ここで、教科書内のすべての数式とすべての説明文は、有限の記号列、つまり 52 個のラテン文字といくつかの特殊記号 (「+」や「=」など) の視覚的な有限シーケンスであることに注意してください。たとえば、1+1+y=2x は、有限記号セット全体の 8 つの要素で構成される有限シーケンスです。私たちが「数学的証明」と呼んでいるものは、実際にはそのような有限のシーケンスで構成された文字列です。

人間の数学のこの特徴は、最も広い意味で現実を理解する上で極めて重要です。ガリレオの言葉を言い換えると、物理学に関する現在の知識、つまり物理的現実の基礎に関する厳密な理解はすべて、数学の言語で書かれています。それほど厳密ではない科学でさえ、数学のように有限の記号列を使用して構築されます。これは人間が科学的な予測を説明する方法であり、私たちが持つ知識を表現する方法です。したがって、現実に対する私たちの理解は、実際には、それぞれが有限の記号セットの要素を含む、有限の記号シーケンスの巨大なコレクションにすぎません。

数学の教科書に出てくるこれらの記号列の意味は複雑ではないことに注意してください。それは、生贄の羊の内臓の模様や、焼成後の亀の甲羅に現れるひび割れ模様と何ら変わらないとも言える。私たちの科学と数学は単なる有限の記号の集合であり、これらの記号自体には意味がありません。

この結論は新しいものではない。実際、哲学の分野における多くの研究はそこから派生しています。関連研究では、科学理論や数学理論で使用される記号の有限シーケンスを外部のものに関連付けることで、科学理論や数学理論をより正確にしようとしています。これは、認知科学や哲学におけるいわゆる「記号基礎問題」です。数学の分野では、形式論理を現代モデル理論（ステートメントとそれが記述するモデルとの関係の研究）とメタ数学（数学を用いた数学の研究）に拡張することで、同様の方法でこの問題に対処しようと試みてきました。

現代の科学と数学は、有限の記号列のみに基づいて構築されています。これらの有限の記号列以外に、現代の数学的演繹における他の作業や他の形式は存在しません。これは本当に衝撃的なことだ。

6. これらの有限の記号列、つまり数学的および科学的言語の外部形式は、物理的現実の必須の特徴なのでしょうか、それとも、人間が物理的現実を形式化する方法の限界を反映しているだけなのでしょうか。

この質問はすぐに次の質問につながります。

7. 人間の数学が無限の記号列を含むように拡張された場合、物理的現実に対する私たちの認識はどのように変化するでしょうか?

無限の記号列を使用する無限の証明は、有限の速度で計算した場合、有限の時間内に結論付けることはできません。限られた時間内に結論に到達するには、私たちの認知能力が「スーパーコンピューティング」または「スーパーチューリングコンピューティング」を実行できるほど十分でなければなりません。これは、現在のコンピューターよりもはるかに強力な機器を使用することによってのみ達成できる仮想的な状態です。

たとえば、ロケットにコンピューターを搭載し、ロケットを光速近くまで加速すると、コンピューターは相対論的効果を利用して、膨大な計算を限られた時間内に圧縮することができます。

しかし、スーパーコンピューティングがあっても、現在の数学の形式の拡張は、依然として人間の数学の形式で提示されます。数学が有限の記号の有限の列として記述されなかったらどうなるでしょうか?

アメリカの哲学者ダニエル・デネットらは、人間の数学、そしてもっと広く言えば科学で使われる形式が、たまたま人間の言語の形式に合致していると指摘している。実際、ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン以来の哲学者たちは、一般的に数学を人間の言語の特別なケースとみなしてきました。この見解では、数学の文法は人間の言語の文法と同様に、対話とコミュニケーションから始まるとされています。

私が驚くのは、人間の言語の限界と、その限界がいかに普遍的であるかということです。

人間のコミュニケーションの固有の設計は、形式論理およびチューリングマシンの理論と一致しています。哲学者の中には、これは幸運な偶然であり、素晴らしい偶然だと考える人もいます。私たちは偶然にも、形式論理に準拠した認知ツール、つまり人間の言語を発明しました。これらの哲学者たちは、これは私たちが物理的宇宙の法則を完全に理解する能力を同様に持っていることを意味すると主張しています。

反対論者は、強い皮肉を込めて、「人間は、物理的現実のすべてを理解するのに必要な認知能力をまさに持っているだけで幸運だ。それ以上でもそれ以下でもない」と言うかもしれない。彼らはまた、フェロモンの痕跡から「宇宙の法則」を構築することしかできないアリが、「世界がどのように機能するか」を理解する認知能力を持っているのは幸運だと結論付けるかどうかについても疑問に思うだろう。あるいは、光屈性植物は、自分たちが太陽を追跡できる認知能力を持っているのは幸運だと結論付け、それに基づいて「宇宙の法則」を構築することもできるだろうか。

人間の言語は再帰を許可しているため、有限のアルファベットから記号を選択して抽象的な記号のシーケンスを構築できます。そして実際、人間はあらゆる種類の予言を作り出します。ノーム・チョムスキーのような言語学者はこれに驚嘆します。しかし、私が驚かされるのは、人間の言語の限界と、その限界がいかに普遍的であるかということです。

8. 現在の私たちの認知能力がさまざまな数学的・物理学的理論を構築できるのは単なる幸運な偶然でしょうか?あるいは、もっと率直に言えば、私たちは現在の認知能力では表現できない数学的、物理的な内容を想像することができないだけなのでしょうか?

たとえば、海やよどんだ池に浮かぶ楕円形の生物である単細胞生物のゾウリムシを例に挙げてみましょう。「問題」が生活に直接影響を及ぼさないのであれば、ゾウリムシがこの「問題」に関連する概念を想像できないのは明らかです。私の犬と同じです。

ゾウリムシは現実についての質問に対する可能な答え（もちろん私たちが可能だと考える答え）を理解することはできませんし、質問自体も理解できません。しかし、より根本的な点として、ゾウリムシは、物理的現実の性質について疑問を抱くことが可能であるとは思いもよらなかった。

したがって、質問とその答えに関連する認知概念は、物理的現実を理解するための重要なツールであり、ゾウリムシはそのようなツールを持っていないと言えます。ゾウリムシは、私たちが「物理的現実を理解する」ということが何を意味するのかさえ知らない可能性が高い。この結果の理由は、結局のところゾウリムシの認知能力の限界に帰着します。

しかし、私たち人間はそんなに違うのでしょうか?この制限から完全に解放されますか?実際、人間の認知能力にも限界があることはほぼ確実です。さて、この記事の最後から2番目の質問です。皮肉なことに、これは自己言及的な質問です。

9. ゾウリムシが「問題」という概念を決して理解できないのと同じように、人間の脳の限界により永遠に私たちの想像を超える、物理的現実を完全に理解するために必要な特定の認知要素はあるのでしょうか?

この問題を説明するには、まず何が書かれていないかを強調すると役立つかもしれません。まず、「私たちは決して知ることはない」とは、具体的にどういう意味でしょうか?問題自体について私たちはどれだけ知ることができるでしょうか?この質問には制限はありません。

実際、私たちには決して「知る」ことができないものでも、想像する能力が残っているものはたくさんあります。私たちが決して知ることのないすべてのもののうち、私たちの想像を超えるものはほんのわずかです。したがって、厳密に言えば、このはるかに小さいサブセットについて何を「認識」できるかという疑問が生じます。

例えば、量子力学の多世界解釈では、他の世界の枝で何が起こっているかを正確に知ることはできませんが、それを完全に想像することはできます[5]。ここで私が関心があるのは、完全に知ることができない情報や、ハッブル望遠鏡の範囲外での出来事やブラックホールの事象の地平線内での出来事など、直接観察できないという理由だけで不明な科学的変数の値ではありません。

私たちがこれらの出来事について決して知ることができない理由は、人間の脳が作られている科学と数学に固有の限界があるからではなく、単に現在の工学技術では観測できないからである。言い換えれば、私たちはこれらの出来事について知ることができますが、そこに至る道筋はまだ見つけられていません。

したがって、問題は、本質的に知ることができない、つまり私たちが決して気づくことのできない（記述したり使用したりすることすらできない）認知内容にはどのようなものがあるか、ということなのです。

私たちの子孫は私たちよりも多くのことを想像できるようになると思われます。

ゾウリムシにとって、「問題」が何であるかを想像することすらできません。言い換えれば、ゾウリムシにとって、「問題」という概念自体は、疑問を提起したり解決したりすることはおろか、永遠に知ることのできない認知内容なのです。私が皆さんの注意を喚起したいのは、人間の想像を完全に超えているけれども、物理的現実を包括的に理解するために極めて重要な認知内容が存在するかどうかということです。言い換えれば、本質的に認識可能な認知内容が存在するかどうか、しかし人間は、その本質的な限界のために、それを決して認識できず、物理的現実のこれらの疑問に対する究極の答えを知ることができないかどうかが問題なのです。

これは、先ほど簡単に議論した質問に戻ります。つまり、将来、シンボルセットがどのように進化していくと考えられるでしょうか?もちろん、その前提は、本質的には認識可能であるが、人間が決して想像することができない認知内容が実際に存在するということです。その前提は、私たちが実際には想像できない物事の特定の側面を実際に知ることができるということです。

©NASA/ESA

10. 将来の人類の科学と数学が物理的現実を完全に捉えることができるかどうかを検証できる方法はあるでしょうか?

ある観点から見ると、この質問は明らかに陰謀論の科学版のように思えます。この問題は、他の大きな解決不可能な問題とそれほど変わらないと主張する人もいるかもしれません。幽霊が存在しないということや、古代バビロニアの守護神であるマルドゥクが人間の営みの背後にいないということを、経験的にも理論的にも証明することはできない。

しかし、この質問に対する答えが（ある意味では）実際にあるかもしれないことを示唆する（少なくともそれを支持する）証拠が少なくとも 3 つあります。

まず、もし私たちがスーパーコンピュータを構築し、それを使って、私たちの手にはまったく届かない知識がどのようなものかを探ってみれば、この疑問の答えに近づくことができるかもしれない。さらに大胆に言えば、人間の認知能力が向上するにつれて、観察、シミュレーション、理論、その他のプロセスを通じて、これまで想像もできなかった物理的現実を構築できるようになるだろうと推測することもできます。言い換えれば、心の拡大と技術の進歩という好循環こそが、私たちの祖先の脳を生み出した進化の偶然から私たちを解放したのです。

第二に、もし私たちが地球外知的生命体に遭遇し、その後何らかの形で巨大な星間種族通信ネットワーク（一種の宇宙データベースとみなすことができる）に参加すれば、他の知的生命体から私たちが望む質問と回答を得ることは完全に可能になる。このように、本質的には認識可能だが人間には決して想像できない物理的現実が存在するかどうかを知りたい場合は、宇宙フォーラムに質問を送信して、全員の意見を聞くだけで済みます。

私たちの最も広範な進化の子孫がどのような姿をしているのか想像してみてください。ここで私が言及しているのは、伝統的な新ダーウィン進化論に従って私たちから進化する未来の人類だけではなく、有機か無機か（あるいはその両方か）を問わず、私たちが意図的に設計するすべての種のメンバーについてもです。おそらく、将来の世代は私たちよりも多くのことを想像できるようになるだろう。

さらに、次の世紀には、より認知能力が発達した「子供たち」が誕生する可能性が高いと思われます。おそらく彼らが到着してすぐに、私たちは絶滅するでしょう（すべての良き親が子供たちのために道を切り開くために自分自身を犠牲にするのと同じように）。ですから、私たちは驚いて口を開けて子供たちを見つめながら、出発前の最後の手段として、子供たちにこうした混乱を招く質問を投げかけることができるのです。

参考文献:

[1]arxiv.org/abs/2208.03886

[2]www.maths.ed.ac.uk/~v1ranick/papers/wigner.pdf

[3]aeon.co/essays/意識は不気味な謎でも幻想的な信念でもない

[4]aeon.co/essays/意識の難しい問題は現実からの逸脱である

[5]aeon.co/essays/ヒュー・エヴェレットの多世界理論による宇宙の分割

デビッド・H・ウォルパート

翻訳：シュリンプソルジャー

校正/ウサギの軽い足音

オリジナル記事/aeon.co/essays/ten-questions-about-the-hard-limits-of-human-intelligence

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、Xia BingがLeviathanで公開しています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。