集団での意思決定が間違った方向に進むのはなぜでしょうか?

1986年、チャレンジャー号は打ち上げ直後に爆発した。© Boing Boing

リヴァイアサンプレス:

実は、つい最近、映画『十二人の怒れる男』（1957年）を再度観たばかりです。映画の陪審員12人のうち、当初容疑者が「有罪」かどうか疑問視したのは1人だけ（11人中1人）だったが、物語が進むにつれて投票結果は徐々に逆転した。

2/10➝3/9➝4/8➝6/6➝9/3➝8/4➝11/1…12/0まで。

© ギファー

もちろん、記事にもあるように、「集団思考は精神的惰性の一形態である可能性があるが、すべての精神的惰性が集団思考につながるわけではない」。 『十二人の怒れる男』の冒頭の圧倒的な「罪悪感」は、この種の精神的惰性の現れであるように思われる。彼らのうちの一人は、口論を早く終わらせて家に帰って試合を見るために、自分の罪悪感を勝手に変えたほどである。最終的に結末が逆転することになったのは、少数派（ヘンリー・フォンダ演じる建築家）の「合理的な疑い」に対する主張だった。

しかし、一般的に「集団思考」とは、集団が非合理的な決定を下す意思決定プロセスを指します。これは「十二人の怒れる男」の冒頭の状況に少し似ています。個々のメンバーが自分の意見を集団と一致させる傾向があるため、集団全体ではさまざまな視点が欠け、客観的な分析を行うことができません（これには、集団思考を誘発する8つの先行要因（高い集団凝集性、外部の情報と分析からのグループの孤立、命令型のリーダーシップ、意思決定方法の無秩序、グループメンバーの背景と価値観の類似性、外部からの脅威と時間的制約からのプレッシャーなど）も含まれます）。これは実に非常に興味深い現象です。 「集合知」によって引き起こされる「集合的盲目」のプロセスはどのようにして起こるのでしょうか?

1970 年代、心理学者アーヴィング・ジャニスの先駆的な研究のおかげで、よく知られ、説明の必要もないだけでなく、ほとんどの人が直接経験する現象が注目を集めました。私がお話ししたいのは「集団思考」についてです。

© ホルスト・ファース/AP

ジャニスは、自分が研究した失敗した集団決定のいくつかに集団思考の症状があることに気づきました。彼は特に、ピッグス湾侵攻やベトナム戦争の激化、そしてスペースシャトル「チャレンジャー」号の惨事における集団思考など、ホワイトハウスの失策を懸念している。ジャニス氏はこれを「集団の圧力による思考、実用性、道徳的判断の効率性の集団的低下」と呼んでいる。

しかし、正確にはどの時点で集団思考が委員会、政治組織、社会の意思決定プロセスを支配し、破壊するのでしょうか?グループの慎重な検討が無駄にならないようにするには、どの程度の独立した思考が必要でしょうか?自分の立場を振り返ることは、この中でどのような役割を果たすのでしょうか?

ヴィッキー・チューチャオ・ヤン氏とその同僚が米国科学アカデミー紀要（PNAS）に最近発表した論文では、これらの問題が詳細に議論されている。

(www.pnas.org/content/118/35/e2106292118)

応用数学者の楊秋橋氏。 © サイアム

ヤン氏は、複雑性科学の発展を主な目的とする才能ある学者の集団であるサンタフェ研究所で人間の集団行動を研究する応用数学者です。グループの意思決定が2つの選択肢のうち悪いほうに振れる可能性を探るために、ヤン氏のチームは個人学習者と社会学習者という2種類の学習者を持つシンプルなモデルを構築した。

個人学習者は独立して考えますが、社会的学習者は他者からの意見を求めます。ヤン氏は、気候変動やパンデミックなど人類が直面している危機の多くは、解決するために集団的な思考と行動を必要とするため、社会的学習者は社会システムにおける「大物」であると述べた。社会的学習者は、頼りになる可能性のある候補者です。「集団での意思決定に関する重要な問題は、社会システムのメンバーの一部が自分の選択ではなく他人の選択を重視する場合に、そのシステムが最良の結果を生み出せるかどうかです。」

ここで問題となるのは、社会的学習者ではありません。頑固で考えを変えようとしない個人学習者こそが問題の原因なのです。

© ベリーウェルマインド

ヤンのモデルは、個人学習者または社会学習者から始まり、学習者全員が 2 つのオプションのうち 1 つをランダムに選択します。あなたと 19 人の友人が来週末にどの映画を見るか決めるとします。Spider-Sheep 4 か The XI のどちらかです (誤解のないよう申し上げますが、これらの名前はすべて私個人のもので、ヤン氏とは一切関係ありません)。全員がレビューを読む前に、グループは 2 つの映画を半分ずつ気に入る可能性があります。しかし、オンラインレビューの 80% は、『スパイダー・シープ 4』の方がストーリーが優れており、演技 (特に羊) も優れており、視覚効果もより素晴らしいと考えています。

時間が経つにつれて、友人の中の個々の学習者は自分自身の判断に基づいて最終決定を下しましたが、一方で社会的学習者はグループ内の他の人々の集団から結果を得ました。では、グループの大多数が評価の高い映画、あるいはヤン氏の言葉を借りれば「より価値のある選択肢」を選ぶ確率はどれくらいでしょうか?

研究者らは、グループ内の社会的学習者と個人学習者の比率の変化、最終的に『スターウォーズ』よりも『スパイダーシープ』を選んだ個人学習者の割合、友人同士の群れ行動の強さなど、いくつかの異なる変数も試した。

最後の要因は、社会的学習者のさまざまな行動に依存します。いくつかのグループでは、低強度の同調が観察されました。つまり、社会的学習者は、グループ内の他の人から圧倒的な同意があった場合にのみ選択を変更します。研究者たちは、社会的学習者はグループが十分な情報に基づいた判断を下すのを待つように見えるため、この行動を「情報的同調」と表現しています。あなたの友人の中に映画が好きだけど、仕事が忙しくてレビューを読めない人がいるなら、その人は情報フォロワーかもしれません。

他の研究でも、集団内での同調性が高いことが観察されており、これは社会的学習者は主流の意見に影響を受けやすいことを意味しています。この影響を受けやすい性質は「規範的順応性」と呼ばれます。これは、社会的学習者は情報に基づいた意思決定よりも集団内の調和を重視する傾向があるためです。

あなたの友人のうち 10 人が個人学習者で、10 人が情報フォロワーであると仮定しましょう。そして、10 人の学習者のうち 8 人が最終的に Spider Sheep を視聴することを決定します。ヤングの分析によれば、これは、最初の投票が 80 対 20 よりも 50 対 50 に近い可能性が高いにもかかわらず、グループ内の残りの人々の大多数が最終的にスパイダー・シープを見ることを選択することを意味します。実際、最初のグループ内の無知な意見が「興九大戦」に傾いていたとしても、上記の結果は依然として当てはまります。

一方、グループ内の社会的学習者が全員、ただ友達と仲良くしたいだけのお気楽な怠け者であれば、グループ全体の行動はより予測不可能なものになるでしょう。ヤン氏のチームは、このシナリオでは、順応者の割合が一定の閾値を超えると、グループは双安定状態になり、最終決定は情報のない人々の当初の意見と、誰がいつ考えを変えるかによって決まることを示しました。

おそらく、グループの 45% が最初に Spider-Sheep を好んだ場合、最終的には Spider-Sheep が勝利するでしょう。しかし、この見解に賛成する人が 40% しかいない場合は、勝者は「The Greatest Showdown」になります。あるいは、『The Great Eternal Love』の主人公が、十分な数の社会学習者を説得して、最終的にはクモ羊を（その羊がどれだけ優れた成績を収めたとしても）追い抜くことになるかもしれません。結果を予測するのは不可能ではないにしても、極めて困難になります。

特定の人が特定の情報を受け取るかどうかよりも、人が送信する情報の内容の方が重要です。

「良い映画を見たい」という順応主義者の欲求と「みんなが仲良くしたい」という欲求と、個々の学習者間の意見のバランスによって、双安定システムを予測不可能にするために必要な社会的学習者の数が決まります。

情報的順応性と規範的順応性が社会的学習者の間で均等に分布している場合、ほぼすべての学習者が社会的でない限り、結果はスパイダー・シープ型を示すとパネルは予想します。社会的学習者が「平和主義者」タイプに近いほど、予測不可能な混乱に陥れるよう促す人が少なくなります。

© 企業の社会的責任に反対

現実の世界では、おそらく完全に「個人的」または「社会的」な学習者である人はいないでしょう。ほとんどすべての人が、その両方を少しずつ持っています。同時に、私たちの周りの他の人々も私たちに同じ影響を与えることはないでしょう。さらに、私たち自身でさえ、なぜあるものを他のものより好むのかを説明できないこともあります。そして、考えの変化は単なる気まぐれである可能性があります。

こうした現実の状況を再現するために、ヤン氏とその同僚はモデルの少し複雑なバージョンを 3 つ使用しました。これらのモデルは、上記のより単純なバージョンと非常によく似た動作をしますが、1 つの例外があります。それは、個人がランダムに考えを変える可能性が比較的高い場合 (たとえば 50% 以上)、ノイズによって信号がかき消されてしまう可能性があるということです。最終的にグループは均等に分裂し、合意に達することができなくなります。

ヤン氏のチームは、このモデルの別のバリエーションも試した。それらは、一方の選択肢を他方の選択肢よりも「固定的」にします。つまり、このオプションを好む個々の学習者が考えを変えて、他の学習効果を無視することがより困難になります。心理学者のアダム・グラントは、著書『Think Again』の中で、これを「白痴の山に閉じ込められている」と呼んでいます。 「選挙予測者が成功するための最も重要かつ唯​​一の動機は、彼らが自分の考えを更新する頻度だ」と彼は書いている。

たとえば、あなたのグループは『最後のジェダイ』の熱狂的なファン（そして『最後のジェダイ』を一度も見るのをやめられない）である一方、他のグループはこれらの映画をすべて観ていて、観続けるつもりはない、といった具合です。評価の高い映画 (この場合は Spider Sheep) の粘着性も高ければ、モデルは以前と同じ経路をたどります。しかし、「星九大味氣」の粘着性が高ければ、結果は完全に逆転します。ソーシャルラーナーの割合が低い場合、評価は低くなるものの、最終的には「The Greatest Showdown」が勝利するでしょう。社会的学習者の割合が増加すると、双安定状態が発生します。

ここで問題となるのは社会的学習者ではないことに注意してください。頑固で考えを変えようとしない個人学習者が問題の原因です。

これらの結果（現在はコンピューターでシミュレートされた単なる数学モデル）が現実と一致するとしたら、それは何を意味するのでしょうか?エコーチェンバーを破壊し、ユーザーが反対意見を持つ人々のコンテンツを見ることができるようにすることなど、ソーシャルメディアへの変化が民主化を促進するだろうと多くの人が推測している。

しかし、すべての社会的学習者が他者から影響を受ける可能性があるモデルで得られた結果は、学習者間のコミュニケーションが制限されているモデルで得られた結果と変わりません。特定のメッセージを誰が受け取るかよりも、送信されるメッセージの内容の方が重要です。

どの組織を念頭に置いているかに関係なく、主要なグループのメンバーは、文書による証拠に基づいて自己評価を実施する必要がありますが、評価の判断には柔軟性も必要です。ヤング氏とその同僚が発見したように、「個々の学習者のグループが新しい証拠に基づいて考えを変えなければ、彼らの選択はソーシャルネットワーク全体に波及する可能性がある」からです。さらに、良くも悪くも、これは「少数派が根強く残ると、民主的な投票の結果に大きな影響を与える可能性がある」ことを意味します。

集団思考は知的怠惰の一形態である可能性がありますが、すべての知的怠惰が集団思考につながるわけではなく、すべての社会的学習者が知的に怠惰なわけではありません。ヤン氏のチームは、情報的適合は準備不足の意思決定に対処するための効果的な戦略となり得ること、また規範的適合も適度であれば効果的であることを示した。本当の問題は、新しい情報が明らかになっても自分の意見を再考する意志がない、あるいはできないグループのメンバーたちです。

ヤングの研究は、反復的な思考の欠如が個人だけでなくグループ全体の成功を台無しにする可能性があることを示している。 「集団思考の症状は、意思決定グループのメンバーがリーダーや同僚の意見を軽視し始めたときに現れる」とジャニスは指摘する。成功しているグループは、グラント氏の言葉を借りれば、「間違えることの喜びを受け入れ」、考え直すことを受け入れる文化を奨励しています。

ジョシュア・ホールデン

翻訳者：イシュマエル

校正/ウサギの軽い足音

オリジナル記事/nautil.us/what-makes-group-decisions-go-wrong-and-right-13408/

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、IshmaelがLeviathanに掲載しています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。