放置された土壌は私たち人間の健康と密接に関係しています |陳能昌

毎年4月22日は地球の日で、世界の環境保護のために制定された祝日です。既存の環境問題に対する人々の意識を高め、環境保護運動への参加を促し、グリーンで低炭素なライフスタイルを通じて地球全体の環境を改善することを目的としています。しかし、環境保護は決して空虚なスローガンではありません。今日は、土壌に関する知識を学び、母なる地球が直面している現状を理解することから始めましょう！

土は地球の「皮膚」として、無数の生命を育み、豊かな食料を私たちに与えてくれますが、どこにでもあるため、私たちはそれを当たり前のこととして捉えがちです。近年、カドミウム米や有毒ショウガなど農産物の安全性を脅かす事故が多発しており、農産物が栽培される土壌の状態に対する懸念が高まっています。

● 土壌の定義と起源

「土」に関して言えば、「地球」と「土」の概念は少し異なります。 『周書』には「万物が生育する所を土といい、土は唾のようなものである。人が土地を耕し、木を育てる所を埴土といい、埴土は見た目が穏やかである」とある。それ以来、私たちの祖先は「土」と「ローム」を区別し始めました。 「土」は、人間によって開発されていない自然界の生命を支える物質を指すのに対し、「土」は人間の生命を支える物質を指し、土地の肥沃度と関連しており、私たちはこれを「土地の肥沃度」と呼ぶことが多い。

なぜそのような区別があるのでしょうか?この物語は、人類が足元の「土」でより多くの食糧を生産できることに気づいた12,000年前から始まります。農業文明の始まりは、人類が狩猟や採集に一生懸命働く必要がなくなったことを意味しました。土壌は人類の生存と発展の基盤を築いたと言えます。

▲漢字の構成から「土」の人類学的意味を紐解く

よく観察してみると、私たちの漢字の多くは実は「土」という文字から派生したものであることがわかります。たとえば、「生」という文字は「牛」と「土」を組み合わせたものです。土と牛があれば、人生は始まります。

▲陳能昌研究員が科学調査現場で畑仕事をする牛たちと記念撮影

この意味で、「土壌」という言葉には、より深い人類学的な意味が与えられているようです。

「土」と「土」をテキストの観点から分析した後、「土」自体はどの程度重要ですか？諺にもあるように、「すべてのものは土から育つ」のです。現在地球上に生息する870万種の生物のうち、4分の1が土壌中に生息しています。一方、土壌中の生命は巨大な食物連鎖を形成し、土壌中のさまざまな元素の物質循環を促進します。これらのプロセスにより土壌は活力に満ちます。一方、生物の死後の物質は、さまざまな有機物、特に腐植として土壌に蓄積され、土壌構造を形成し、土壌が水分や肥料を保持できるようにします。

これは単に何度も繰り返される循環的なプロセスに過ぎないと言う人もいるかもしれません。しかし、実際の土壌形成プロセスは極めて遅いということを彼らは知りません。 500年ごとに約0.05 mmの土壌が形成されます。言い換えれば、硬貨ほどの厚さの土壌が形成されるには少なくとも18,500年かかることになります。中国の5000年の歴史は、薄い土の層が形成されるのに要した時間のほんの一部にも満たない。そうでなければ、どうして土壌は再生不可能な資源だと言えるのでしょうか?それは石油よりも重要な戦略資源です。

このような貴重な土壌がどのようにして形成されたのか、皆さんも興味があるのではないでしょうか。これは岩石の風化によるものです。数千万年という長い年月をかけて、熱膨張と収縮による岩石の割れ、下等生物（シアノバクテリア、地衣類、コケ類など）の侵入、化学物質や生物の分解、有機物の継続的な蓄積により、私たちが目にする明確な層状の土壌プロファイルが形成されました。

▲左は自然土壌断面、右は田んぼ断面（inはインチ、1インチ＝2.54cm）

● 私の国では耕作可能な土地面積が大幅に減少しています

上の写真から、土壌によって違いがあることは容易にわかります。我が国の国土面積は世界第3位で、広大な領土と豊富な資源を有しており、我が国では土壌が「問題ではない」と多くの人が考えています。しかし、実際には、すべての土地が耕作可能な土地というわけではありません。 2021年8月26日に発表された「第3回全国土地調査主要データ速報」¹によると、我が国の耕作可能地は1億2,786万1,900ヘクタール（1,917億9,279万ムー）である。第2回全国土地調査と比較すると、全国の耕作地は10年間で1億1300万ムー減少しており、これは寧夏回族自治区全体の減少に相当する。

▲画像出典：Zhiyan Consulting

耕作地の肥沃度の最も重要な指標の一つである土壌有機物含有量は、過去30年間で地域差はあるものの、わらの畑への還元、不耕起または最小限の耕起技術、緑肥や堆肥の施用の推進により、中国の農地表土の有機物含有量は全体的に上昇傾向にある。第2回土壌調査期間と比較して、表土中の有機物含有量の全国平均は24.49%増加しました。しかしながら、我が国の農地土壌の高強度利用により、現状の土壌有機物含有量は諸外国に比べると依然として低い水準にあります。

●土壌汚染の種類と現状

食物は穀物に基づいており、穀物は土に根ざしています。米を例に挙げてみましょう。今年の315ガラで暴露された人工的に添加された「味付け米」に加えて、すべてのものは土とともに成長します。農作物を育てる土壌自体が汚染されれば、CCTVで明らかにされた「カドミウム米」や「有毒ショウガ」事件のような食品安全問題も引き起こすだろう。

土壌は開放系であることがわかっています。そのため、人間が不法に投棄した汚染物質、産業活動によって発生した大気、水、固形廃棄物の汚染物質、農業活動中に発生した汚染物質を含む農業資材（動物性肥料、鉱物性肥料など）が土壌に入り込み、汚染を引き起こす可能性があります。さらに、重金属の背景値が高い土壌が酸性化すると、重金属が不溶性の形態から植物が利用できる形態に変換され、土壌汚染や作物の金属含有量の過剰を引き起こす可能性があります。 （注：土壌背景値とは、人為的汚染の影響を受けない自然環境中の化学元素および化合物の含有量を指します。背景値が高いということは、人為的汚染によるものではなく、土壌中の重金属の自然含有量が高いことを意味します）

▲土壌と周辺環境の相互作用

2014年4月17日には早くも「国家土壌汚染調査速報」² で、国内の土壌環境の全体的な状況は楽観的ではないことが示されました。一部の地域では土壌汚染が深刻で、耕作地の環境の質が懸念されるほか、工業・鉱山荒廃地の土壌環境問題も顕著であった。

土壌汚染は、汚染物質によって無機汚染（重金属など）、有機汚染、生物汚染、放射性汚染に分けられます。

汚染の分布から判断すると、南部の土壌汚染は北部よりも深刻です。土壌汚染問題は、長江デルタ、珠江デルタ、中国北東部の旧工業地帯などの一部の地域でより顕著です。南西部と中南部地域で基準を超える重金属の範囲は比較的広いですが、それは主に高バックグラウンドによって引き起こされます。

土壌汚染は、汚染源によって大気型、水型、スラグ型、道路汚染型の土壌汚染に分けられます。世界の工場として、私の国は相当量のカドミウムを大気中に排出してきました。乾性沈着や湿性沈着によって土壌に入る重金属の量も相当な量です。この種の汚染の拡大は空気の流れに関係しています。水質汚染は主に下水灌漑によって引き起こされます。スラグ汚染の影響範囲は小さいですが、道路汚染は主に道路の両側の数十メートル以内です。汚染の程度は交通量に関係します。

● 土壌汚染と食品の安全性、人間の健康との関係

マクロ的な観点からここまで述べてきましたが、誰もが最も心配しているのは間違いなく「これは自分とどう関係があるのだろう？」ということです。土壌汚染が人間の健康に与える影響は、食物、土壌との接触、土壌の吸入などを通じて直接的なものもあれば、飲料水、空気などを通じて間接的なものもある。次の図は、土壌汚染が人間の生活と健康に深く関係していることを直感的に理解するのに役立ちます。

▲翻訳：陳能昌研究員

食品の安全性との関係について語るとき、土壌汚染の種類の中でも重金属汚染について触れなければなりません。多くの重金属汚染の中でも、カドミウム汚染は人体の健康に特に敏感な影響を及ぼす可能性があります。最も典型的な例は、前世紀に日本で発生した「イタイイタイ病」です。これは、土壌中のカドミウム汚染の問題にもっと注意を払う必要があることを警告しています。

カドミウム汚染はどれほどひどいのでしょうか?それが人体に与える影響は微妙です。重金属「カドミウム」は発がん性物質として特定されています。臨床事例では、職業上の「カドミウム曝露」が肺がんを引き起こす可能性があることが示されています。食物や喫煙など他の経路で吸入されたカドミウムも、前立腺がん、乳がんなどと関連しています。低用量のカドミウムは糖尿病にも影響を与える可能性があります。

▲土壌・植物・ヒト（動物）系における重金属の代謝に影響を与える要因

カドミウムは主に人体の腎臓と肝臓に蓄積されます。腎皮質中のカドミウムが200 mg/kgを超えると、近位尿細管が損傷し、尿タンパク質とカルシウムの再吸収が困難になる可能性があります。カドミウムとカルシウムのイオン半径は似ているため、カドミウムは骨の中のカルシウムと置き換わり、骨粗しょう症や骨軟化を引き起こす可能性があります。これが「イタイイタイ病」の根本原因です。

▲左が米、右が小麦

私の国では昔から「南は米、北は麦」という食文化があり、米は中国だけでなくアジア諸国の人々にとって主食です。したがって、米は人体にとってカドミウムの主な供給源です（喫煙者を除く）。国連食糧農業機関（FAO）³ は、米のカドミウム含有量の制限を 0.4 mg/kg と規定しており、私の国における米のカドミウム含有量の制限は 0.2 mg/kg です。

カルシウム、鉄、亜鉛、セレンなどの栄養素は、人体によるカドミウムの吸収に強い拮抗作用を及ぼします。これらの栄養素は、大豆、小麦、トウモロコシなど他の主食に比べて含有量が少なく、主に米の皮層に分布しており、カドミウムは主にグルテンと結合して米中に均一かつ安定して分布しているため、玄米から精米に加工し、洗米・蒸し加工すると、米中の栄養素の80％が除去されてしまいます。相対的に言えば、カドミウムは約 10% しか除去できません。したがって、カドミウム米自体は非常に有害です。

皆さんが心配している「毒生姜」事件についてお答えします。毒ショウガが「有毒」である理由は、主に鉛含有量が基準を超えているからです。一般的に、ショウガの鉛含有量の制限は 0.1 mg/kg です。しかし、米と比較すると、生姜が食事に占める割合はごくわずかで、「千切り生姜」や「生姜スライス」などの調味料の形で存在することが多いです。そのため、安全性の面では「カドミウム米」と「有毒生姜」には違いがあります。私は私たちの農家を代表して発言したいと思います。ショウガ生産の健全な発展を確保するためには、ショウガの重金属含有量基準について議論し、最適化する必要がある。

この時点で、誰もが間違いなく、自分で野菜を育てて家族全員を毒殺した老人に関するネットニュースを思い出すだろう。実際のところ、これらの報告のほとんどは土壌汚染とは直接関係がありません。むしろ、それらは農薬残留物、作物の生物学的汚染、食品加工中の汚染に関連している可能性があります。結局のところ、土壌汚染が人間の健康に与える影響は慢性的なものであることが多いのです。報告書に食中毒の原因が土壌汚染にあると書かれていた場合、その真偽については読者が何度も判断しなければならないかもしれない。

● 安心して購入・食べられる農産物・副産物

この時点で、土壌汚染された作物をどのように特定できるのかと疑問に思う人もいるかもしれません。実際、これは医師の診察とまったく同じです。患者の特定の症状に基づいて、病気の具体的な原因について直接結論を導くことはできません。実際、土壌汚染された農産物と基準を満たした農産物の間には、外見上大きな違いは通常ありません。消費者が外見だけで区別するのは困難です。原産地や作物の種類などの情報に基づいてのみ分析できます。

先ほど述べたように、ジャポニカ米のカドミウム蓄積能力はインディカ米やハイブリッド米よりも低く、ジャポニカ米のカドミウム含有量は全体的に低いです。野菜の場合、カドミウム含有量は一般的に葉野菜の方が高く、次いで塊茎、そして果物と野菜が最も低くなります。

▲異なる種類の作物の土壌カドミウムと鉛の吸収能力の相対的比較

作物の種類から始めることは判断の方向の 1 つですが、一方で、国家の健康と安全の認証を探すこともできます。以前、我が国の農産物認証は、無公害、グリーン、オーガニックの3つのレベルに分かれており、それに応じて安全性が高まっていました。

▲我が国における過去の農産物安全認証の3つの主要な種類

無公害農産物とは、生産環境、生産工程、製品品質が国家の関連基準や規格の要求を満たし、認証を受けて認証証書を取得し、無公害農産物ロゴの使用を許可された優良品質の農産物及びその加工品を指します。グリーン農産物とは、無公害で安全かつ高品質の農産物を指し、具体的には国家の食品衛生基準を満たし、専門機関によってグリーン食品ロゴの使用が承認された農産物を指します。有機農産物とは、有機農業の理念や有機農産物の生産方法・基準に従って生産・加工され、有機食品認証機関によって認証された農産物です。

2001 年 4 月に農業省が「無公害食品行動計画」を正式に開始したことは注目に値する。わが国は2022年以降、無公害農産物の認証を停止し、農産物原産地証明書の発行も停止しました。そのため、現在でも市場で見かける国家認証を受けた安全な食品は「グリーンフード」や「オーガニックフード」が主流となっています。

一般的に、公式・正規のルートを通じて販売される農産物・副産物は、国家の品質検査基準を満たした安全で健康的な食品であり、国民は安心して購入することができます。

著者: 広東科学院生態・環境・土壌研究所研究員、陳能昌。主な研究方向は、重金属の根と土壌の界面挙動、植物の葉における窒素損失、土壌重金属汚染の制御と修復、土壌汚染と食糧安全保障と人体の関係連鎖の分析です。

参考文献

¹「第3回国土調査主要データ速報」

http://www.gov.cn/xinwen/2021-08/26/content_5633497.htm

²「国家土壌汚染調査速報」

http://www.gov.cn/foot/2014-04/17/content_2661768.htm

³ コーデックス委員会 (2006) コーデックス委員会第 29 回会議報告書、ALINORM 06/29/41。コーデックス委員会、FAO、ローマ